研究課題/領域番号 |
19K10461
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中川 量晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (60585719)
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研究分担者 |
戸原 玄 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00396954)
片桐 さやか 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60510352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 摂食嚥下障害 / 栄養吸収 / 栄養代謝 / とろみ調整食品 / ラット |
研究実績の概要 |
高齢者や摂食嚥下障害患者では、誤嚥性肺炎や低栄養を予防するため経口摂取を断念し、経腸栄養を選択することがあるが、長期化すると消化管運動機能が低下し、慢性便秘などが生じる。嚥下障害や経腸栄養管理をする患者の腸内環境に関する報告はほぼ皆無である。本研究の目的は、咀嚼障害/胃ろうモデル動物を作製し、経腸栄養により、(1) 栄養状態、咀嚼筋機能が変化するか明らかにすること、(2) 腸内細菌叢にどのような影響を及ぼすかの基礎的データを取得すること、である。 令和元年度は予備実験として、嚥下障害患者が食形態の調整のために用いるとろみ調整剤(とろみ剤)が、経腸栄養剤の吸収に影響を及ぼすかどうかを検討した。体重の推移、および飼育後に臓器重量と血液生化学検査結果を統計学的に検討したところ、体重増加率は液体群と比較してとろみ群で有意に低値を示した。腎臓重量は液体群と比較しとろみ群で有意に低値であり、生化学検査は、とろみ群で血中グルコース(GLU)が有意に低値であった。令和2年度は、とろみ剤の摂取により、血中トリグリセロール、および血中グルコースが有意に低下することを明らかにした。とろみ剤の成分である不溶性食物繊維のキサンタンガムには血糖値上昇抑制効果があることが報告されており、とろみ剤自体の摂取によっても栄養吸収が阻害されると考えられた。 令和3年度はとろみ剤の長期投与が栄養吸収に及ぼす影響を調査した。その結果、とろみ剤単回投与後、および長期投与群はいずれもとろみ剤を摂取していないコントロール群と比較し血糖上昇が抑制された。また回腸のGlp1遺伝子発現がとろみ剤摂取後に有意に増加し、長期のとろみ剤摂取は、消化管ホルモンを遺伝子レベルで変化させる可能性を新たに明らかにした。この知見は、耐糖能異常の嚥下障害患者に対する血糖コントロールや食事療法に応用できる可能性がある。
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