研究課題/領域番号 |
19K10462
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伊澤 淳 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (50464095)
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研究分担者 |
日高 宏哉 信州大学, 学術研究院保健学系, 特任准教授 (10362138)
増原 宏明 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (10419153)
横川 吉晴 信州大学, 学術研究院保健学系, 准教授 (50362140)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯周疾患 / 国民健康保険 / データベース / 脳心血管病 |
研究実績の概要 |
松本市の歯周疾患検診の結果と,国民健康保険の診療報酬明細(レセプト)上の病類コードを突合し,歯周疾患検診異常と全身疾患の関連を解析した先行研究に引き続いて研究を継続している。 目的:松本市で実施している歯周疾患検診の結果と,国民健康保険の診療報酬明細(レセプト)上の病類コードを突合し,歯周疾患検診異常と全身疾患の関連を明らかとする。方法:2008年4月1日~2016年3月31日の期間に松本市で歯周疾患検診を受診した6068例のうち,医療機関で国民健康保険による診療を受けた2574例を対象とした。年齢,性別,残存歯数,健全歯数,喪失歯数,地域歯周疾患指数(community periodontal index: CPI)を集計し,各年度5月分のレセプト合計19367件より病類コードを抽出後,重複を削除しロジスティック回帰分析により疾患を有するオッズ比を解析した。結果:歯周疾患検診で認める異常(残存歯数の減少,健全歯数の減少,喪失歯数の増加)は,脳心血管病(狭心症,心筋梗塞,動脈瘤,動脈硬化),および高血圧性疾患,糖尿病等の代謝性疾患の病名を有するリスクが高いことが示された。脳心血管病に対するオッズ比は,既存の危険因子で調整後も有意であった。さらに,残存歯数や健全歯数の減少,喪失歯数の増加は,骨の密度および構造の障害など骨格系の疾患名との関連が示された。結論:歯周疾患検診で認める異常(残存歯数の減少,健全歯数の減少,喪失歯数の増加)は,国民健康保険レセプト上の脳心血管病,代謝性疾患,骨の密度および構造の障害など骨格系疾患と有意な関連を認めた。 本研究では引き続き国民健康保険データベース(KDB)システムを活用し,特定健診結果,疾患コード(ICD-10),介護度等の情報を包括して探索的に検討する準備を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の先行研究は「医科歯科連携による先進予防医療研究会・松本(D-CAMP松本)」において,松本市歯科医師会,松本市医師会,松本市による研究連携を基盤として展開された。解析結果について,複数の学会発表の後に論文発表を準備している。引き続き歯周病例の治療経過のデータ収集を予定しているが,新型コロナウイルス感染症の拡大と対策のため一時中断した。 一方,大規模データに基づく歯周疾患と全身疾患の関連を探索するため,長野県健康福祉部医療政策課と連携して国民健康保険データベース(KDB)の活用を目指し,2020年度にデータベースを構築した。 以上より「おおむね順調に進展している」と評価し,データベースに基づく解析を展開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
国民健康保険データベース(KDB)を活用するため,長野県健康福祉部医療政策課との連携が進捗している。長野県のKDBに収載されている疾患コード(ICD10),介護度などに関する5年間(予定)の大規模データを集計し,経過中の全身疾患の発症や介護度の上昇と関連する背景を網羅的に解析する予定である。ICD-10のK05:歯肉炎及び歯周疾患のうち,K05.0 急性歯肉炎,K05.1 慢性歯肉炎,K05.2 急性歯周炎,K05.3 慢性歯周炎,K05.4 歯周症,K05.5 その他の歯周疾患,K05.6 歯周疾患,詳細不明,以上の区分を分析対象としている。大規模データであり,解析のためのワークステーションと,解析手法としてBusiness Intelligence (BI) ツールの導入を検討し,全身疾患の発症との関連について解析を準備している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はデータ収集が完了し,PCにデータベースを構築した。一方,その解析のためのワークステーションとBusiness Intelligence (BI) ツールの導入は,最終の2021年度にまとめて予定し,解析する計画としたため,次年度使用額は2021年度請求額と合わせて導入費用に充てる。
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