研究実績の概要 |
長野県松本市の特定健診(8,312例)および後期高齢者検診(16,240例)の歯科的問診項目(食事時の口腔・嚥下機能の自覚症状)に対する回答を解析した結果、「やや気になることがある」および「問題があり食べにくい」に該当する例の割合は、30―39歳で7.4%、40―74歳で10.4%、75歳以上では15.3%であった。当該例の歯科受診状況は、調査時点で通院(治療)中が51.4%と高値だった。 特定健診・後期高齢者健診(合計24,552例)の歯科的問診項目の回答結果を分析した結果、加齢と共に口腔嚥下機能の異常を自覚する例が多いことが明らかとなった。そのうち歯科診療中の例は半数を超えており、治療を必要としないか希望しない例を合わせると、健診結果から新たに歯科受診に至る例は少数であった。健診受診者を対象としていたため、ヘルスリテラシーが高いか、健康関連行動に対するアドヒアランスが高い集団だった可能性が考えられた。 本研究が計画していた歯周病と全身疾患の関連および予後調査は、治療対象の歯周病を有する例の診療経過について解析を予定していたため、健診を契機とした対象者の登録は困難が想定された。さらに新型コロナウイルス感染症の拡大は、地方都市の医師会・歯科医師会の診療連携や、研究対象者の登録等に大きな支障となった。そこで研究計画を変更し、長野県の国民健康保険データベース(KDB)に基づいた大規模データの解析を進めることとした。経過中の全身疾患の発症や介護度の上昇と関連する背景を網羅的に解析する研究を計画した。ICD-10のK05:歯肉炎及び歯周疾患のうち、K05.0 急性歯肉炎、K05.1 慢性歯肉炎、K05.2 急性歯周炎、K05.3 慢性歯周炎、K05.4 歯周症、K05.5 その他の歯周疾患、K05.6 歯周疾患・詳細不明、以上の区分を分析対象とし、今後の研究に発展させることとした。
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