研究課題
好酸球性食道炎 (EoE) の患者と健常者をリクルートし、口腔洗浄液を細菌サンプルとして細菌ゲノムをPCRを用いて検出した. EoE患者では健常者に比べ、う蝕原因性菌であるStreptococcus mutans (S.mutans) の保菌率が高かった(54%vs 84%). また、S.mutansの保菌とEoEの有無とのodds比を検討したところ、EoEである被験者ではS.mutansの保菌が4.65倍有意に高い(Odds ratio 4.65 p=0.0089)ことが示された. また、S.mutansには亜種がおり、コラーゲン結合タンパク(cnm)を介して全身疾患の発症にかかわることが疑われている. そこで、S.mutans由来のcnmについてもPCRにてその保持率を検討した. その結果、有意な差は認められなかったものの、健常者に比べてEoE患者ではその保持率が高く(健常者:7.69% vs EoE患者:20.45%)、疾患と関連する傾向が認められた. これに対し、歯周病原因性菌であるPorphyromonas gingivalis (P.gingivalis)、Prevotella intermedia、Toreponema denticolaの保菌率は健常者と患者で差は全く差は認められなかった.また、 P.gingivalisは歯周病を悪化させる悪性度の違いによって6種類に分類されている. 本検討ではその亜種の保菌についても併せて検討した. しかしEoE患者で特定の亜種の保菌率に差がはなかった.以上の検討結果から、高病原性口腔内細菌のうち、S.mutansとその亜種がEoEの発症とかかわりがある可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
患者のリクルートと解析をスムーズに行うことができ、患者において特定の細菌の保菌率が高いこと確認することができた.おおよそ予想通りの結果を得ることができ、今後の研究計画についても進める準備と環境は整っていることから、本研究は順調に進展している. 1点、次世代シーケンサーの解析を行わなかったことが当初の計画通りではなかった. これは研究分担者との相談の結果、もう少し健常者の数を増やし、本年度の結果を再検討してから次の検討を行うこととなったためである. すなわち、研究計画全体の中の若干の変更点であり、研究の進捗には大きな影響を与えるものではないと考えている.
前述したように、健常者の数を増やして本年の結果を再検討する. これによって年齢や性別をパラメータに含めて多変量解析を行うことが可能となり、それら因子の交絡を考慮したうえで各細菌の保菌とEoEとの関連を検討する. さらに、比較対象として通常の逆流性食道炎の患者でも比較を行う. さらに、可能であれば治療抵抗性の有無と細菌の保菌との関連についても比較を行う. それらを踏まえて、EoEの発症や悪化に関与する口腔内細菌の絞り込みを行い、それら細菌あるいは細菌由来の分子が疾患にどのように関与するか検討を行う.
患者のリクルートと口腔内細菌の解析がスムーズに進んだため、かなり費用が抑えられた. また、今後行う予定である次世代シーケンサーの解析はかなり費用が掛かることに加え、サンプルを小分けにして解析することが困難である. その性質を考慮して、追加の健常者サンプルがそろった段階で解析を行う. そのため、本年中の解析は見送っており来年度に予算を繰り越した.
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Trials
巻: 21 ページ: -
10.1186/s13063-020-4201-y.
https://www.med.shimane-u.ac.jp/pharmacology/index.html