研究課題/領域番号 |
19K10471
|
研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
村田 貴俊 鶴見大学, 歯学部, 講師 (10313529)
|
研究分担者 |
花田 信弘 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70180916) [辞退]
宮之原 真由 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (70460186)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | Streptococcus mutans / 脳卒中 / コラーゲン結合タンパク |
研究実績の概要 |
コラーゲン結合タンパクを発現するStreptococcus mutans感染と脳卒中発症との関連が報告された。しかしながら、菌体は、通常、脳血液関門を通過できないことから、S. mutansが直接脳卒中発症に関与するメカニズムは不明である。そこで、脳血液関門を通過する可能性のある、S. mutansが産生・分泌する極微小のメンブランベシクルに焦点を当て、培養上清からコラーゲン結合タンパクを含むと予想されるメンブランベシクルを獲得した。また、コラーゲン結合タンパクコード遺伝子破壊株を作製し、破壊株培養上清からコラーゲン結合タンパクを確実に含まないメンブランベシクルを獲得した。加えて、コラーゲン結合タンパクを特異的に認識するポリクローナル抗体を作製した。 当初の想定通り、S. mutans菌体に存在するコラーゲン結合タンパクが、存在様式は不明であるが、S. mutans通常株培養上清中から検出された。一方、研究当初より、メンブランベシクルは細菌最外層の細胞壁成分を含むと想定していたのだが、培養上清からグラム陽性菌の細胞壁成分であるタイコ酸は検出できなかった。つまり、S. mutansのメンブランベシクルは細胞壁を含まないか、あるいは、極僅かであることがわかった。この新規ではあるが、想定外の所見はメンブランベシクルの定量マーカーとして細胞壁が使用できないことを示す。そこで、メンブランベシクルの定量マーカーとして、通常株、遺伝子破壊株どちらにも存在する細胞膜のりん脂質を定量マーカーとして採用し研究を展開する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究当初より、メンブランベシクルは細菌最外層の細胞壁成分を含むと想定し、定量マーカーとして採用する予定であった。これは、目的遺伝子破壊でも細胞壁合成に影響を及ぼさないと考えられるからである。しかしながら、「S. mutansのメンブランベシクルは細胞壁を含まない」という所見を得た。そのため、定量マーカーとしての細胞壁が使用できず、代替定量マーカーの探索に時間を要した。当初の予定ではIn Vitro、In Vivo実験に取り掛かっている予定であるが、現在、細胞膜の主成分であるりん脂質を定量マーカーとした方法の最終検証段階であるため、進捗状況がやや遅れているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
メンブランベシクルの定量法は確立されておらず、当初、細胞壁を定量マーカーとする予定であったが、メンブランベシクルには細胞壁が存在しないようである。そのため、メンブランベシクルを構成するリン脂質を定量マーカーとする定量法の確立を目指す。 メンブランベシクルの定量法が確立されたのち、メンブランベシクルのコラーゲン結合能、血管内皮細胞への侵入能をin vitro実験で、脳出血誘発能を動物実験で評価する。 研究課題を遂行する上での課題として、メンブランベシクル獲得の効率向上があげられる。メンブランベシクル獲得にはリットル単位の培養上清からの濃縮が必要である。その効率を上げるためにの培養上清濾過システムを構築する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症蔓延の影響による所属機関からの通勤制限により予定の研究が滞り、予定物品購入を繰り越した。また、参加予定の学会が、新型コロナ感染症蔓延の影響で軒並み中止、またはオンライン開催となり旅費を使用していない。以上から、当該年度に予定した研究の進捗が若干遅延することとなり、予定研究にかかる費用をそのまま次年度に使用予定である。当該年度に予定した研究を可及的速やかに終了させ、次年度分助成金で次年度予定の研究を行う予定である。
|