高齢者の誤嚥性肺炎発症リスクの低下を目指し多面的な研究が並行して進められてきている中で,摂食嚥下機能の向上,新規の口腔ケア手法の開発など,多面的な研究が並行して進められてきている.その中で,高齢者の舌菌叢が大きく2つのタイプに分けられること,タイプ間で肺炎関連死のリスクが有意に異なることが分かってきた.本研究では,我々が構築した菌叢構成を維持したまま培養可能な口腔の菌叢培養モデルと次世代シークエンス技術を組み合わせることで,舌菌叢のタイプを健康型へと遷移させる方法や添加物をヒト介入試験をすることなく探索することを目指す.初年度は,成人(中年期以前)舌苔を用いた菌叢遷移条件の検討(N=4)を行い,解析パイプラインの構築を完了させた.2年目は,成人(中年期以前)舌苔を用い,pHと酸素濃度が舌苔菌叢に与える影響を解析した.3年目は,pHと酸素濃度が口腔細菌叢に与える影響を詳細に解析した. 研究課題最終年度は,pH(5.5~8.0まで0.5刻み)と酸素濃度(0~20%)を変動させ,その細菌叢の挙動を解析するとともに,変動した細菌叢の可塑性についても解析を行った.Rスクリプトのワークフローを使用することで配列情報の統計解析を行ったところ,pHや酸素に対応して,元の細菌叢を維持する場合と変化してしまう場合があることが明らかとなった.今回の結果を元に,高齢者サンプルにおいても,pHや酸素濃度による細菌叢変動の解析を行っていく予定である.そして,学会発表や文献発表を行う予定である.
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