研究課題/領域番号 |
19K10483
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
横山 宏樹 滋賀医科大学, 医学部, 客員講師 (80220573)
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研究分担者 |
荒木 信一 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (80378455)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 糖尿病性腎臓病 / 生命予後 / 心血管疾患予後 / 腎機能予後 / コホート研究 |
研究実績の概要 |
近年、多くの新たな糖尿病関連治療薬の開発により糖尿病治療成績が向上し、血管合併症の発症・進展率が改善されてきているが未だ十分ではない。また、レニン・アンギオテンシン系阻害剤の普及と糖尿病患者の高齢化に伴い、アルブミン尿の増加を伴わず腎機能のみが低下している患者が増加してきており、新たに糖尿病性腎臓病(DKD)の概念が提唱されている。しかしながら、我が国におけるDKDの実態、予後、治療戦略については十分に解明されていない。 本研究の概要は、糖尿病データマネージメント研究会(JDDM)で実施している時代背景が10年異なる2つの前向きコホート研究を比較検証し、時代変遷に伴うわが国の糖尿病診療・治療成績の推移、生命予後への影響、血管合併症リスク因子の変化を明らかにすること、特に、我が国におけるDKDの実態・リスク因子・予後を解明することで、糖尿病血管合併症の克服に向けた新たな糖尿病治療戦略の構築を目指すことである。追跡日程スケジュールは、研究計画書(H30.10.28版)に資料1として明示し、これに従って進行している。2つのコホートの観察開始時の比較解析は、既にJDDM46として論文化された(BMJ Open Diab Res Care 2018;6:e000521)。今回、第一次コホートの10年間追跡データベースより、DKDの観点からみた生命予後、心血管イベント発症予後、腎機能予後の比較解析を行い、JDDM54として論文化に成功した(Diabetes Care Volume 43, May 2020, e-pub ahead)。日本人糖尿病患者のデータとして、正常アルブミン尿腎機能低下群は、対照群(DKD無しで正常アルブミン尿腎機能正常群)と比較して、死亡・心血管疾患発症のリスク及び腎機能低下速度は同等であり、正常アルブミン尿腎機能低下群は、アルブミン尿高値群(腎機能正常群・低下群を含め)に比べて、死亡・心血管疾患発症のリスク及び腎機能低下速度は明白に良好であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書の資料1の追跡日程スケジュールに従い、第一次コホートでは、2017-2018年におけるイベント発症の有無に関する第7次追跡調査の結果の回収が2019年末日までに完遂された。第二次コホートでは、2017-2018年におけるイベント発症の有無に関する第2次追跡調査の結果の回収が2019年末日までに完遂された。これらの作業はコホート研究事務局の研究員の参加施設との日々の交信により行われている。 これらの結果に対して、2020年1月にイベント判定委員会が開催され、イベント発症の審議が行われた。審議の上で確定したイベント有無の結果に基づき、現在データベースの更新作業が開始されている。追跡期間中の受診時データに関しては、JDDMデータセンターへ該当対象者の抽出を依頼し、データクリーニングを施行した後に、データベースへ組み入れていく。 概要にも述べたように、解析進捗状況としてJDDM54が論文化された。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、第一次・第二次コホートのデータベース更新作業を進めていく。さらに2021年初頭から開始する第一次コホート第8次追跡調査と第二次コホート第3次追跡調査の準備を開始していく。また時代背景が10年異なる2つのコホートにおいて、まだ第二次コホートの追跡年数は4-6年と短いものの、観察年数に従った生命表法分析により、生命予後、心血管イベント発症予後、腎機能予後に関して比較解析が出来るか、検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データベース更新作業の効率が向上してきていること、協力施設からの回答が迅速化できてきていることが、次年度使用額を生じることができた理由であると考えられる。2020年1月のイベント判定委員会において第一次・第二次コホートの新たなイベント判定結果が出されたので、この入力作業に多大な労力が必要とされており、したがって生じた次年度使用額は、引き続き翌年度分として、上記を含んだデータベース更新作業へ使用する計画である。
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