研究課題/領域番号 |
19K10486
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
高橋 俊文 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20302292)
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研究分担者 |
太田 邦明 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 博士研究員 (90424142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 産婦人科 / 地域格差 / NDB |
研究実績の概要 |
産婦人科は医師の減少と地域偏在化が進行している。産婦人科は女性特有の身近な疾患を取り扱う診療科であり医師の増加と地域偏在の是正は急務である。しかし、産婦人科の“診療態”と“診療の質”に関して「地域間格差」が存在するかどうかの検討はなされていない。本研究では、医療ビッグデータであるリアルワールド系(NDBとDPCデータ)およびレジストリ系データベースを用い、包括的に婦人科診療の“診療実態”と“診療の質”の「地域間格差」を検討した。 研究初年度の令和1年には、NDBを用いた婦人科診療格差の調査と解析を行った。特に婦人科手術に着目し、腹腔鏡下手術の地域格差の検討討を行った。その結果、腹腔鏡下手術の技術認定医(婦人科視鏡学会の認定)の数と腹腔鏡下手術件数の相関が明らかとなった。腹腔鏡下手術技術認定医の数は地域偏在を認めるため、腹腔鏡下手術が多い地域と少ない地域の格差があることが初めて明らかになった。令和2年には、NDBを用いて子宮摘出に関する我が国の手術の実態に関する地域格差について検討を行った。その結果、子宮摘出数には地域格差を認めた。また、我が国では、子宮筋腫の内科的な薬物療法の種類が増加しているにもかかわらず、手術件数の増加を認めた。子宮筋腫の有病率に変化を認めないことから、子宮摘出の多い地域では、産婦人科医師が手術治療を選択することが多い傾向にあることが明らかになった。令和3年度では、NDBを用いて、性分化異常疾患の治療実態と子宮鏡下手術に関する地域偏在の有無について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度に実施した研究では、NDBを用いた研究の限界もあり、データ解析と論文化に遅れが生じている。性分化異常疾患で手術的な治療を実施するものには、腟欠損を伴うものとアンドロゲン不応症がある。いずれの疾患も頻度が高くないため、手術件数の記載がマスクされているものが散見された(10例以下は個人特定の可能性を考え公表されない)。一方、子宮鏡下手術では、子宮内膜ポリープ切除、子宮筋腫(粘膜下筋腫)切除、子宮鏡下子宮中隔切除術、子宮内腔癒着切除術、子宮鏡下子宮内膜焼灼術などがあるが、これらの手術も手術件数が少ない地域では手術件数の記載がマスクされていた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究成果まとめ現在論文作成中であり、国際的な学会誌に投稿予定である。本研究はNDBを用いた日本での産婦人科診療のアウトカムである手術手技に着目したものである。本研究では、産婦人科診療は地域格差を認めていることを明らかにした。今回は婦人科疾患の手術に着目した研究であるが、産婦人科医師は婦人科手術だけでなく周産期医療の担い手でもある。本研究の成果は、日本における産婦人科医師の偏在化の議論における基礎的なデータとなる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究最終年度(令和3年度)に実施した研究のデータ解析と論文執筆が終了しなかった。そのため、研究期間を1年間延長したため、次年度使用額が生じた。令和4年度には、執筆論文の英語校正および投稿料金などの費用に研究費を使用する予定である。
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