産婦人科診療における「地域間格差」の有無を検討するため、本研究では医療ビッグデータであるリアルワールド系(NDBおよびDPCデータ)およびレジストリ系データベースを包括的に利用し、婦人科診療の診療実態と診療の質に関する地域間格差を解析した。具体的には、令和1年度にはNDBを用いた婦人科診療格差の調査と解析を行い、腹腔鏡下手術の地域格差に着目し、腹腔鏡下手術技術認定医の数と腹腔鏡下手術件数の相関を明らかにした。その結果、腹腔鏡下手術技術認定医の数には地域偏在があることが判明し、腹腔鏡下手術が多い地域と少ない地域の格差が初めて明らかになった。また、令和2年度にはNDBを用いて、子宮摘出に関する我が国の手術実態に関する地域格差についても検討を実施した。その結果、子宮摘出数にも地域差が見られ、子宮筋腫の内科的な薬物療法の種類が増加しているにもかかわらず、子宮摘出の多い地域では手術治療が選択される傾向が明らかになった。令和3年度には、性分化異常疾患の治療実態と子宮鏡下手術に関する地域偏在の有無についてもNDBを用いて検討を実施した。そして、令和4年度には、令和3年度に実施した性分化異常疾患の治療実態と子宮鏡下手術に関する地域偏在の有無に関するデータ解析および論文執筆を行った。
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