研究課題/領域番号 |
19K10488
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
川口 龍二 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50382289)
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研究分担者 |
常見 泰平 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (20599831)
佐道 俊幸 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (50275335)
竹田 善紀 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (50825239)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 静脈血栓塞栓症 / 予防法 / 帝王切開術 / 抗凝固薬 |
研究実績の概要 |
肺血栓塞栓症(PTE)は、妊産婦死亡要因の第3位を占め、とりわけ帝王切開術におけるPTE発症リスクは高く、その死亡率は14.5%と高率である。過去16年間に集積した3,519例の帝王切開術症例から症候性VTEの「リスク因子」を抽出し、 帝王切開術における選択的・個別的なVTE予防プログラム(PROVEN study 4)を立案した。本プログラムでは、抗凝固薬の重篤な出血という有害事象を避けるためには「除外基準」や「減量・中止基準」も設定した。すなわち本邦における帝王切開術後のVTEに よる産婦死亡をゼロにするためには、煩雑なVTEスクリーニ ングを必要としない、簡便なおかつ安全・有効で副作用の少ないVTE予防法を広く普及させることが重要であると考えた。 研究期間内の帝王切開術は897例であった。そのうち、リスク因子として、BMI≧27;261例、術前長期臥床;29例、血栓性素因;49例、抗リン脂質抗体;6例、常位胎盤早期剥離;16例、低出生体重児分娩;61例、妊娠高血圧合併既往;97例、下肢静脈瘤合併;6例であった。これらのリスク因子を一つ以上有する症例に術後、抗凝固薬によるVTE予防を行った。なお、分娩前の体重が50kg未満;43例に対しては、抗凝固薬の投与量を半減した。また、脳出血の既往;4例、ヘパリン過敏症の既往;3例に対しては抗凝固薬の投与は行わず、理学的予防法のみ行った。その結果、本プロトコールにおいて、帝王切開術後に症候性の静脈血栓塞栓症は認めていない。また、抗凝固薬使用例にminor bleedingを34症例に認めたが、major bleedingの有害事象は1例のみ認めた。以上より、VTE「リスク因子」を有する帝王切開症例に対して、「除外基準」、「減量・中止基準」を考慮した本プロトコールの有用性が確認された。
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