研究課題/領域番号 |
19K10491
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研究機関 | 東京情報大学 |
研究代表者 |
松下 博宣 東京情報大学, 看護学部, 教授 (70591949)
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研究分担者 |
藤谷 克己 文京学院大学, 保健医療技術学部, 教授 (80604123)
市川 香織 東京情報大学, 看護学部, 准教授 (90375882)
土谷 朋子 文京学院大学, 保健医療技術学部, 准教授 (40555075) [辞退]
茂籠 幸代 (池田幸代) 東京情報大学, 総合情報学部, 准教授 (40344460)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多職種連携 / チーム医療 / 医療の質 / 医療安全 / コンピテンシー / インフォマティクス / 主観的幸福度 / 国際共同研究 |
研究実績の概要 |
浜松市リハビリテーション病院、聖隷三方原病院、富士宮市立病院、JR札幌病院で収集したデータを計量分析した。これらの研究成果を日本語論文3報、国際共同研究の成果を英語論文4報として発表した。それらの発展形として、英語・日本語で各1冊専門書を刊行した。Health Informatics: Translating Information into Innovation (Translational Systems Sciences Volume 24)をSpringer Natureから出版した。多職種・多セクター連携によって生成される「情報」がイノベーションに転換され、また再帰的にイノベーションが新たな情報を生み出すという複雑で相互作用・依存的なシステミシティに注目し、カナダ、フランス、ベルギー、日本の協力・分担研究者24名を糾合して研究代表者松下博宣が企画・編集した。 日本語では、研究代表者の単著として「多職種連携とシステム科学~異界越境のすすめ~ 」(日本医療企画刊)を刊行した。多職種連携を、現場実践、理論、そして科学的・実務的知見を綜合するためにソフトシステムとしてとらえ、システム科学の視座とメタ理論を用いて論述した。 以上のように、日本語圏、英語圏の学術コミュニティに対する研究成果の発信は良好であった。多職種連携に関する招待講演の機会も増え、国内学会、看護協会などからの研究代表者の招待講演実績は7となり、アウトリーチ活動も順調であった。国際共同研究者の中心的研究者Carole Orchard博士(カナダ・ウェスタン大学教授)をオンラインにて招聘して、日本看護経済・政策研究学会第41回研究会と日本臨床救急医学学会第23回学術集会にて多職種連携の国際状況に関して講演。研究代表者が座長を務め、合計300人余の参加者を得て盛会であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の4病院にて、日本語版多職種連携協働評価スケール(AITCS-II-J)を含むウェブ・ベース・サーベイを実施した。多職種連携というソフトシステムはそれ自体で独立に存在するものではなく、上位・下位・並立システムとともにホリスティックに連動させる必要がある。上位システム としての価値/目標システム(Value and Objectives System)、下位システムとしての組織風土・組織行動の前提システム(Premise System of Organizational Climate & Behavior)、並立システム としての組織/人間開発システム(Organizational & People Development System)である。 上記理論構成をベースにして、研究代表者のコンサルティング・ノウハウを活かし、 アクション・リサーチ・プログラム(ARP)として、AITCS-II-Jの結果を臨床現場にフィードバックして臨床現場の変化を自律的に起こす組織行動・組織学習変革プログラムを『新しいヘルスケアマネジメントのための多職種連携(Interprofessional Collaboration for New Healthcare Management)』を構築し体系化した。従来、可視化できていなかった多職種連携やチーム医療の実態を、チーム別、部署別、職種別、クリニカルラダー別等に「見える化」できるので、幸いクライアント(協同研究病院)からは好評を得た。ARPも有用であるとの評価をいただいた。以上のように論文、書籍の学術成果の発表、ARP等のアウトリーチ活動などアウトプットはまずまずであった。しかしながら、研究フィールドとなる複数の急性期病院はコロナ禍のため調査ができなくなり、新規データ収集は遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
目的変数として医療の質・安全レベルをとらえ、説明変数として多職種連携を位置づける研究は、一定の検証ができたものの継続する。今後の進捗方策は、以下のように5点に集約される。 (1)多職種連携を目的変数とし、メゾ説明変数(組織系)として①組織学習、②心理的安全性、ミクロ説明変数(個人系)として③首尾一貫感覚(sense of coherence)、④性格特性等を措定し、学術的に未知の領域を開拓する。 (2)以上を綜合してアクション・リサーチ・プログラムをブラッシュアップする。 (3)上記パラメータの相互関係を実証的に計測するために、それぞれに対応する妥当性、信頼性がある尺度を用いてデータを収集し分析する。 (4)代表研究者松下博宣と協力研究者Carole Orchardは、SpringerNatureから、本国際共同研究の成果をまとめ、共著者として次作Innovative Collaboration in Healthcareを出版する。SN社から本件研究の新規性に関する理解を得て、2020年度中に出版契約は完了しており、2021年度中の出版を目指している。 (5)国際共同研究にふさわしく、また本科研のテーマでもある「異質な専門性とアイディアの組み合わせからイノベーションを創発させる」というミッションを推進し、同著の執筆陣として、カナダ、アメリカ、ドイツ、イギリス、オーストラリア、アフリカ、日本の先端的な研究者を糾合する。多職種連携協働・教育、多職種連携システム科学、多職種連携と倫理的苦悩、多職種連携におけるソフト・システムズ・アプローチ、多職種連携コンピテンシー、多職種連携と医療の質との関係、痴ほう症高齢者用のケアロボティスク等のテーマを含める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、予定していた掖済会名古屋病院、トヨタ記念病院を含む共同研究病院が感染症対策、重症者用病床確保等の理由で調査が遅延し、計画していた出張ができなくなった。 今後は、以下の項目で費用を計上するものとしたい。(1)本年度に刊行を予定している英文著作Innovative Collaboration in Healthcareを共同研究者・研究分担者に配布する際の購入費用。(2)富士宮市立病院、JR札幌病院への出張旅費。(コロナ禍がある程度沈静化するという仮定で)(3)海外の共同研究者とミーティングを行うための渡航費。(コロナ禍がある程度沈静化するという仮定で)(4)研究図書費。
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備考 |
「多職種協働チームのヘルスケアサービスの質に対するインパクトの国際的実証研究」研究課題(研究課題/領域番号19K10491:研究代表者松下博宣)に関係する論文、研究ノート、会議スライド、講演資料、記事などのアーカイブ。本科研プロジェクトのホームページとして更新中。
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