研究課題
今世紀に入り,医学教育にも新しい教育理論を取り入れた改革が進んでいる.手術教育においては,もともとon the jobトレーニングが中心であったが,近年,シミュレーションやe-learning,カダバートレーニング(CST)の導入によるoff the jobのトレーニングの充実が行われてきた.これらは,一見,医療安全と両立したアクティブ・トレーニングの充実に見えるが,その本質は,エキスパートの手術をいかに効率的に模倣するか,であり,旧来の教育の延長上にあるといえる.アクティブ・ラーニングの本質は学習者が自ら考えることに重きをおいた教育であり,手術教育のような専門的医学教育においても,学習者が単なるトレースではなく,手術法確立の成り立ちも知った上で自ら考えながら修得する方法がより有効でないか,と考えた.そこで,手術手技の発展を学べる「博物館」に手術トレーニングセンターを設置する構想を持った.本研究は,手術「博物館」の構築し,同所で手術トレーニングを実施し,その有効性について検討するものである.2019年度は,本学の総合的な診療手技トレーニングセンター(シミュレーションセンター)の手術トレーニング室に手術機器ギャラリーを併設する形であったレイアウトを改造し,全体をギャラリー(手術機器博物館)にし,その中にトレーニング機器を配置するように変更した.また,エネルギーデバイスの原理,分類,ピットフォールなどの映像展示を加えた.この中で腹腔鏡下胆嚢摘出術シミュレーションセミナー,ORプロセミナー(手術室に関与する多職種の主にエネルギーデバイスに関するセミナー),腹腔鏡下吻合セミナーを行った.
2: おおむね順調に進展している
2019年度は,手術機器ギャラリーを併設する形であったトレーニングセンターを改造し,全体をギャラリー(手術機器博物館)にし,その中にトレーニング機器を配置するレイアウトに変更した.展示内容は,単なる機器展示ではなく,従来,開催してきた手術セミナーの内容をディスプレイで表示し,エネルギーデバイスの原理,分類,ピットフォールなどの映像展示を加えた.この「博物館」環境で腹腔鏡下胆嚢摘出術シミュレーションセミナー,ORプロセミナー(手術室に関与する多職種の主にエネルギーデバイスに関するセミナー),腹腔鏡下消化管吻合セミナーを行った.参加者アンケート結果は概ね好評であり,研究1年目の目標はほぼ達成された.
(1)博物館内容の充実 病院における機器更新で廃棄することになる機器で,展示,教育に使用できる機器などを博物館展示物に追加するなどで,展示品目を拡充する.手術機器に関する展示内容を充実させ,個々の機器の歴史的背景も加えた説明も加える予定である.映像も利用するが,スマートグラス内に表示するのも検討する.(2)手術セミナー施行 「博物館」の中で手術セミナーを行い,単なるトレーニング機器のみからなるセンターで行うのと比較して,効果的な,あるいは,自ら考察するような結果が得られるか検証を進める.初年度に行った手術セミナーは,腹腔鏡下胆嚢摘出術シミュレーションセミナー,エネルギーデバイスに関するセミナー,腹腔鏡下消化管吻合セミナーであるが,さらに,「博物館」環境を生かした新しい手術教育プログラムを作成する.特に多職種トレーニングの観点からこれまでにないプリグラムを考案する.(3)評価 上述のように,初年度での評価は,参加者アンケートで得られる感想くらいであったので,本研究のアウトカムsであるアクティブ・ラーニングという観点からは,どのような意義があったのか,あるいは実臨床への還元に関して客観的な評価が可能な適切な指標を考案する.
「博物館」展示は,現在,実機の展示と映像に分離しているが,VR, ARなどで重畳させた展示も検討しており,必要機器は来年度購入する.この分が次年度に繰り越された.来年度は,こうした新たな展示環境を生かした新しい手術教育プログラムを作成する.特に多職種トレーニングの観点からこれまでにないプログラムを考案する.
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