研究課題
【研究の背景と目的】医療倫理学では、医師は患者のことを第一に考え、患者のエージェントに徹するべきとされている。一方で医師は社会のエージェントとして、診療行為が社会全体に及ぼす影響にも配慮すべきであるという意見も強い。こうした医師の対立する役割を称して、医師のダブルエージェント論と呼ぶ。本研究の目的は、ダブルエージェント論が、我が国でどのような現象として現れているのかを明らかにすることである。【対象と方法】2021年12月に、200床以上の施設の以下の診療科に勤務する30代~60代の医師を対象にウェブ調査を行った。【結果】回答者は、248人であった。日常の診療の中で、医療財政への負担や、治療の費用対効果のことを「いつも考えている」が61人(24.6%)、「しばしば考える」 が142人(57.3%)であった。また、純粋な医学的判断以外に、その医療に掛かる費用のことを「いつも考慮する」が36人(14.5%)、「しばしば考慮する」が151人(60.9%)であった。次に、「医師には医療制度全体のことも考える必要がある」としたものは、224人(90.0%)であった。これに対して、「受け持ち患者の治療に、費用(医療費)のことは考えず、全力を尽くすのが私の仕事である」としたものは、133人(53.7%)であった。最後に、「医師にはダブルエージェント性がある」と答えたものが210人(84.7%)であった。【考察】80%の医師が、日常診療において、医療財政や費用対効果など社会のエージェント的な考慮を行っていた。さらには、そうした役割を担うべきとしたものが90%に及んでいた。一方で患者のエージェントの役割を強調するものも50%を超えており、そのダブルエージェント性が明らかとなり、また概念としてもそれを認めているものが85%に上っていた。【結論】我が国の医師は臨床において、患者のエージェントと社会のエージェントの両方の役割を担わざるを得ないことを認識していることが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 1件)
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