研究課題/領域番号 |
19K10513
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
濱井 妙子 静岡県立大学, 看護学部, 講師 (50295565)
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研究分担者 |
大野 直子 順天堂大学, 国際教養学部, 講師 (90730367)
西川 浩昭 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (30208160)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 医療通訳 / リスクコミュニケーション / 医療コミュニケーション / 通訳の正確性 / 患者アウトカム / 医療安全 / 外国人医療 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究代表者の所属機関ならびに対象病院の臨床研究倫理委員会(IRB)の承認を得て、外国人患者受入れ拠点病院で調査を実施した。調査内容は病院に雇用されている院内通訳者または患者が同伴した通訳者が介在した外来診療場面の録音調査である。さらに、対象者の背景と患者満足度、患者理解度に関する質問紙調査を実施した。対象者はブラジル人患者と常勤医師、院内通訳者または患者同伴通訳者で、研究への参加協力の同意が得られた者とした。2020年2月12日から3月31日までの間の29日間に、先行調査でブラジル人患者の外来受診が多かった小児科、産婦人科、整形外科、耳鼻咽喉科からデータを収集した。今回は新型コロナウイルス感染拡大防止に配慮し、調査員の人数を縮小し、手洗い・マスク着用を遵守して実施した。その結果、分析対象として院内通訳者介在の診療は48件、患者同伴通訳者介在の診療は8件の有効データが得られた。院内通訳者介在の診療は小児科16件(33.3 %)、産婦人科15件(31.3 %)、整形外科17件(35.4 %)であった。患者同伴通訳者介在の診療は小児科2件(25.0 %)、産婦人科3件(37.5 %)、整形外科2件(25.0 %)、耳鼻咽喉科1件(12.5 %)であった。拒否のケースは、院内通訳者介在で10件、患者同伴通訳者介在で7件であった。現在、対象者の背景、患者満足度、患者理解度に関する調査データについては入力・点検作業を行っている。音声データについては、分析対象言語がポルトガル語(ブラジル)と日本語のため、現在、逐語録を作成し、ポルトガル語の日本語翻訳、日本語翻訳からポルトガル語翻訳へのバックトランスレーション、翻訳データ確認の作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の計画は研究計画実施に向けての準備期間としていたが、対象医療機関と検討して次年度実施予定であった調査日程を前倒して今年度に実施することになった。その理由は2018年度に実施した患者同伴通訳者介在診療調査の有効データ数が少なく追加調査が必要であったため、院内通訳者介在診療と並行して調査をしたほうが効率的で対象者と対象施設への負担が少ないと判断したためである。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の計画は、収集したデータの分析を行う。質問紙調査のデータについては集計し、患者満足度と患者の医師に対する理解度について分析する。さらに、患者、通訳者、医師の患者満足度や患者理解度に対する認識について一致率を算出して分析する。 音声データについては、逐語録を作成し、ポルトガル語の発話を日本語に翻訳し、その日本語翻訳をポルトガル語に翻訳するバックトランスレーション、翻訳の確認作業を経て分析データセットを作成する。通訳の正確性分析は、分析ユニットを逐次通訳ユニットとし、3段階にわけて分析する。第1段階では全ての通訳変更をカウントし、第2段階ではネガティブ4種類(省略、言い足し、誤訳、編集)とポジティブ2種類(省略、言い足し/編集)、通訳に関係ない補足説明をカウントする。第3段階では臨床結果に影響する可能性がある通訳変更を検討する。第1段階と第2段階の分析については、得られたデータの20 %を無作為抽出して、複数のコーダー間評価の信頼性を検討する。その上で、平成28年度のデータと比較分析する。 次に、3者間のコミュニケーション分析は、Roter Interaction Process Analysis System (RIAS)を用いて分析する予定である。そのために、研究代表者と分担研究者はRIASトレーニング・ワークショップに参加する予定である。 これらの研究成果をまとめて、対象医療機関にフィードバックし、関連の学術集会で報告し、論文にまとめて学術誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、新型コロナウィルス感染症拡大防止のために調査員の人数を縮小して調査を実施したため、残額が生じた。残額は、次年度の配分額にあわせて、研究に必要な経費として有効に使用していく。
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