研究課題/領域番号 |
19K10518
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
長谷川 友紀 東邦大学, 医学部, 教授 (10198723)
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研究分担者 |
松本 邦愛 東邦大学, 医学部, 准教授 (50288023)
藤田 茂 東邦大学, 医学部, 講師 (50366499)
瀬戸 加奈子 東邦大学, 医学部, 助教 (50537363)
畠山 洋輔 東邦大学, 医学部, 助教 (80830182)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | HSMR / 病院標準化死亡比 / 医療の質 / 医療安全 |
研究実績の概要 |
医療の質と安全に関心が向けられた当初から、個々の事例では必ずしも事故性を見出せないにも関わらず、総体として成績不良の病院をどのように取り扱うかが問題として指摘されている。通常の医療事故では、当該事故事例をもとに根本原因、再発防止策などを検討し、病院システムの改善を図るという手法が取られる。こうした活動に加え、病院の医療の質と安全を総体として把握し、管理する活動も併せて重要である。その際には実際に観察された死亡数との差から過剰死亡数を算出して評価する手法として、患者重症度を調整して算出した予測死亡数と観察死亡数から算出されるHospital Standardized Mortality Ratio(HSMR:病院標準化死亡比)が利用可能である。 本研究では、DPC/PDPSデータを用いて、リスク調整済HSMRを算出し、病院の安全性を含めたパーフォーマンスを示す指標としてのHSMRの妥当性と信頼性を評価するとともに、HSMRに影響を及ぼす院内体制を明らかにし、今後の改善を支援するための基礎資料を得る。 2019年度の研究では、HSMRの算出手法とその妥当性を議論している先行研究をはじめ、HSMR測定結果を医療の質改善に活用している事例について文献収集を行い、我が国に適したHSMR計算方法について検討を行った。特に、脳卒中及び肺炎を対象として、DPC/PDPSデータを用いたHSMRの計算方法を確立した。また、実際に複数年のデータを用いてHSMRの計算を行い、HSMRが優れた病院が増加傾向にあることが明らかになった。さらに、ある年においてHSMRが優れた病院は翌年も優れる、標準より劣る病院は翌年も劣る傾向があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hospital Standardized Mortality Ratio(HSMR:病院標準化死亡比)の算出手法とその妥当性を議論している先行研究をはじめ、HSMR測定結果を医療の質改善に活用している事例について網羅的にレビューした他、データセットを整備し、2010~2018年のDPCデータからHSMRを検討した。 2019年度の分析対象は脳卒中と肺炎とした。DPC/PDPSデータセットには、公益社団法人全日本病院協会の行うベンチマーク事業であるMedi-target事業のデータを利用した。 研究の成果として、DPC/PDPSデータを用いた患者重症度調整済HSMRを算出するロジックの開発を行い、病院のパーフォーマンスを示す指標としてのHSMRの妥当性と信頼性の評価を行った。HSMRの妥当性と信頼性の評価については、国内外の学会発表や論文の査読を通じて広く意見を参考にした。 脳卒中(2012~2016)と肺炎(2010~2018)は分析期間が異なるが、どちらもHSMRが優れた病院が増加傾向にあることが確認された。また、HSMRにはある年においてHSMRが優れた病院は翌年も優れる、標準より劣る病院は翌年も劣る傾向があることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
諸外国において医療政策策定過程にHSMRを活用している事例を中心に、先行研究のレビューを継続する。 データ分析では分析対象を急性心筋梗塞や脳梗塞にも拡大し、特定の疾患についてHSMRの優れた(劣った)病院が、多年度にわたって優れた(劣った)成績を示しているか、特定の疾患についてHSMRの優れた(劣った)病院が、他の疾患についても同様に優れた(劣った)成績を示しているか、の視点から解析を行うため、データベースの整備を継続する。 拡張したデータベースを用いて、疾病間のHSMRの関係性に関する解析を、横断的、縦断的分析の両視点からすすめる。 解析に際しては、医療安全管理、質評価指標の導入とモニタリング、診療ガイドラインの導入、MMカンファレンスの開催状況、医師の技量評価など、クリニカルガバナンスを含む院内体制の違いがHSMRにどのような影響を与えたかを明らかにする。あわせて、在院日数や再入院等の関連する質指標の情報の収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は予定していた学会参加を都合により取りやめ、分析を進めることにした為、旅費や会議費等の予算に未使用額が生じた。データの分析処理に使用する情報処理機器の更新、周辺機器の購入並びに国内ヒアリング調査等は2020年度以降とする予定である。なお、2019年度中に得られた研究成果を2020年度以降に国内外の学会において報告、論文投稿する予定がある。
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