研究課題/領域番号 |
19K10520
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
金田 英子 日本体育大学, スポーツ文化学部, 教授 (10253626)
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研究分担者 |
永田 容子 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 対策支援部 保健看護学科, 副部長 (30752620)
バイラ ビレンドラ 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (40759221)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ネパール人 / 結核 / 医療通訳 |
研究実績の概要 |
本研究では、在日外国人の中でも罹患者の多いネパール人結核患者を調査対象者として、医療通訳者によるインタビュー調査から抽出される医療格差の諸問題を構造化し実証する。そしてネパール人結核患者が途中で服薬を中断することなく、日本での治療が終了できるよう医療従事者向けの療養支援マニュアルの作成を行うことを目的とするものである。 新型コロナウイルス感染症の影響で、ネパール人の入国が依然難しい状況に置かれている。そのために、在日ネパール人の結核感染者の数も大幅に減少している。令和2年度は、新たに調査対象となる病院を増やしたものの、結果的には2名しかインタビューを実施することができなかった。2名のインタビューから明らかにされたことは、「発熱」「咳」という症状が続いていたが、言葉の問題から、COVID-19を疑われ、受診拒否をされてしまい、病院を転々とし結核と診断がつく頃には、かなり病状が進行しているという問題点が指摘された。また、排菌による入院隔離中は、新型コロナウイルス感染症の影響で面会ができないことから、患者はさらに孤立した状況に置かれていた。 いっぽう医療現場では、結核に限定しなければ医療通訳の機会は、オンライン、電話、対面といった形式で、一定数は常に求められていた。とりわけ、NPO団体には、新型コロナウイルス感染症にともなう相談が多数寄せられていたようである。さらに、啓発ポスターなども多数翻訳されていた。それらの情報は、本研究課題への間接的な情報源となった。 関連研究の実績としては、今年度はネパールでの結核に関する調査の結果を学会にて発表した。さらに、同学会のシンポジストとして、医療通訳の専門職化実現のための必要要件について、ネパールを例に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、(1)在日ネパール人の結核感染者数が減少している、(2)海外への出入国規制のため、国内での実施を見据えた現地でのインタビューができていないことが挙げられる。さらに、ネパール国内では、インドの感染拡大の影響を受け医療崩壊の状況にあることから、現在は、研究に関する連絡も控えている。 令和3年年度も、COVID-19パンデミック前のような状況に戻る可能性は極めて低いことが予想される。したがって、研究目的は変えず、研究方法を再検討していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
インタビューの参加者確保が困難な状況にはあるものの、医療通訳は活動している。したがって、本研究課題であるマニュアルの内容を再検討する。つまり患者の立場ではなく、医療通訳の立場で問題となっていることを抽出・分析し、マニュアルの作成へとつなげる。具体的には、結核の症状の一つとして見られる「痛み」に関する表現や、治療の際の副作用としての皮膚疾患についてである。これらは、ネパール語においても表現が多様で、生活に通訳するのが難しい。そこで、Webアンケートを作成し、在日ネパール人から幅広くデータを収集する予定である。 引き続き、インタビューの機会を待ちつつ、マニュアルの内容構成を検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、COVID-19の影響で、海外および国内旅費を計上したものの使用することがなかった。そのため繰り越しとなった。 令和3年度も、どのような状況になるか現在は判断がつかないが、旅費として使用することを想定している。さらに、マニュアル作成にあたって必要となる物品購入に補填する可能性もある。
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