研究課題/領域番号 |
19K10528
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
渡辺 忍 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教 (60833811)
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研究分担者 |
田宮 菜奈子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20236748)
田中 理恵 筑波大学, 医学医療系, 特任助教 (60827418)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インスリン療法 / アドバンスケアプランニング / 介護保険サービス / 要介護者 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
今年度は、インスリン療法者が治療変更を余儀なくされる状況に直面しやすい、訪問看護師へのアンケート調査を実施した。調査ではインスリン療法を行う要介護高齢者が自己管理が困難となっている場合の訪問看護の現状を明らかにすることを目的とした。当初の計画ではインタビュー調査を予定しており10施設程度からすでに調査協力の内諾を得ていたが、コロナ禍で調査方法の変更を余儀なくされたことに伴い、A県内全域へ対象地域を拡大して148か所の事業所へ自由記載による調査票を郵送した。 その結果、35名の訪問看護師から回答を得た(回収率23.6%)。訪問看護師が自己管理が困難と判断する状況のうちセルフケア上の問題として【インスリン療法の手技に問題がある】、【低血糖やシックデイの対処ができない】等、加齢に起因した生活・健康状態の維持困難な状況として【加齢等による感覚・認知機能、巧緻性の低下がみられる】、【健康状態やADLに悪化がみられる】等、支援体制の状況として【支援体制の構築が困難】というカテゴリ―が抽出された。自己管理が困難と判断された場合の看護としては【医師に治療内容・方法について相談する】、【他の医療機関や介護サービス担当者と連携して支援を検討する】等が抽出された。この他【現状の介護保険制度によるインスリン療法支援の限界と支援拡大の可能性】、【支援ツール・社会資源の開発への期待】等が述べられていた。これらのことから、現状では自己管理が困難な場合の訪問看護として、起こり得るリスクを見据えながらセルフケアを支援することを中心に、医師や他の介護サービスとの連携によって安全な在宅生活の継続を目指しているものの、インスリン療法者が自己管理できなくなった場合は訪問看護を含めた現状の介護保険サービスでは支援の限界があり、治療変更を余儀なくされる現状があると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初は訪問看護師へのインタビュー調査を予定していたが、コロナ禍で対面での調査が困難となり、調査方法の変更を余儀なくされた。遠隔による面談も検討したが、対象者の勤務状況等により時間の調整が困難との理由で、調査票への記載による方法の方が調査協力しやすいとの意見を受け、自由記載による調査方法へ変更することになった。 また、緊急事態宣言の発出等で業務に制限がある中で調査依頼をすることは控えた。 この調査方法の調整・変更のために新たに倫理審査の申請を要する等、調査を始めるまでのプロセスに影響があり、研究が当初の予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、インスリン療法者が治療の自己管理ができなくなった場合、将来的にどうしていくかを検討する必要性に着目した研究であるが、実際にはどのように対応しているのかという実態が明らかになっていないため、基礎調査を行っているところである。 また、研究の過程でテーマとしてある「アドバンスケアプランニング」の導入のためには、対応の「選択肢」を整理する必要があることに気づいた。つまり社会資源としてどのような選択肢があるのかを明らかにすることで、インスリン療法の自己管理が困難になった状況からその後どのようなサポートを受けると有効か選択できることこそ、アドバンスケアプランであると考えた。 しかしながら、インスリン療法を行う要介護者の社会資源活用の現状が明らかになっていない点が多い。 今年度はインスリン療法を行う要介護者が利用するサービスのうち、A県内の訪問介護サービス利用によるインスリン療法者支援の現状を明らかにすることを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナでの緊急事態宣言発出下において、調査研究に遅れが生じたことや調査規模を縮小したことに伴い、計画通りの研究費使用とはならなかった。 今後は新型コロナ感染拡大状況を鑑みながら、遅れた分の調査研究にかかる物品購入や運搬費、学会発表やその参加に必要な経費、論文投稿に必要な校正費や投稿料の支出を予定している。
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