乳房X線撮影は特に被ばく線量の多い検査であり、患者への被ばく線量を評価する際には平均乳腺線量を用いるが、この算出には乳房用X線撮影装置の半価層測定が必須となる。市販の測定器には、1回のX線照射で半価層を測定できる機種があるが、その価格は600万円と非常に高額である。そこで本研究の目的は、1回のX線照射により乳房撮影用X線装置の半価層を表示できる測定器を開発することである。また、測定器の材料費を5万円以下に抑えることで、多くの臨床施設への配置が可能となり、これを用いて適切な日常管理を行うことで、患者の被ばく線量低減に寄与することを目的としている。2019年度は1回のX線照射により乳房撮影用X線装置の半価層を表示できる簡易形測定器について検討した。4個の検出素子にそれぞれ厚さの異なる吸収体を貼付けることで吸収差データが取得可能となった。このデータから積算線量、照射時間、半価層を算出するアルゴリズムを検討し、マイクロコントローラ(PIC16F1847)に書き込んだ。これらを180 mm×130 mm×40mmのアルミケース内に収納し、1回のX線照射で測定データを解析・計算し、液晶表示器に表示できる簡易形測定器を試作した。その結果、積算線量・照射時間・半価層について、基準となる電離箱線量計の指示値に対して相対誤差±1%以内の精度で測定できることを確認した。2020年度は東京都西多摩地区の4施設(公立福生病院、青梅市立総合病院、公立阿伎留医療センター、東大和病院)と都立病院3施設(東部地域病院、多摩総合医療センター、荏原病院)に試作した半価層測定器を設置し、測定精度について検討すると共に、校正時の制御プログラムの最適化について検討した。2021年度は都立病院11施設に設置する測定器を必要数製作したが、2022年度および2023年度はコロナ渦のため設置が完了していない。
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