筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、進行性の神経難病であり、原因究明、治療薬の開発研究が進められているが、現段階では、進行を止める治療法はない。本研究開始当初は、ICF(国際生活機能分類)の構成要因の一つである「参加」に着目した筋萎縮性側索硬化症(ALS)等難病当事者のアドバンスライフプランニング(ALP、ご本人、ご家族、医療・ケア関係者が一体となって、価値観や人生観を尊重しながら、受けたい医療やケア、住まい方、人生設計について話し合い、ご本人の生き方を共有するプロセス)のモデル化と普及を目的としスタートした。しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミック長期化により、ALS当事者の療養は深刻な打撃を受け、コロナ禍以前とは生活の状況、特に社会「参加」について量的・質的に激減するという大きな変化が生じた。そこで、全国のALS当事者を代表し、かつ全国のALS等難病当事者の相談依頼が集まる、日本ALS協会会長歴任者とそのケアスタッフに対する訪問対面調査、および、オンライン面談等により、ALS当事者の社会「参加」を阻害する要因と、促進する要因を明らかにすることで、コロナ禍での新たな生き方を設計するALPについて検討した。 ALS患者の社会「参加」の阻害要因は、新型コロナ感染防止のための外出制限、熟達した介護者の安定確保の困難、症状の進行、とりわけ、非運動症状で、ケアに影響を及ぼす情動制止困難の悪化が挙げられた。一方、社会「参加」を維持・促進する要因は、障がい者総合支援の重度訪問介護の活用、熟達した仙人ヘルパーの確保、若手介護者の養成、口文字法、透明文字盤法など、いわゆるローテクによる24時間・365日のコミュニケーション確保ができる介護者を確保していること、全国のALS当事者・家族との交流、就労支援等行政との直接交渉、介護者への感謝、これまでの愉しみを愉しむ工夫を重ねることが挙げられた。
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