研究課題/領域番号 |
19K10545
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
早坂 明哲 日本医科大学, 医学部, 助教 (50516094)
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研究分担者 |
藤倉 輝道 日本医科大学, 医学部, 教授 (00238552)
根本 崇宏 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40366654)
藤崎 弘士 日本医科大学, 医学部, 教授 (60573243)
三宅 弘一 日本医科大学, 医学部, 准教授 (90267211)
井上 千鹿子 日本医科大学, 医学部, 助教 (90453042)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PBLチュートリアル / 医学教育 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
Problem-based Learning(PBL)チュートリアルのチューターは、グループ討論のファシリテータを担い討論の成果を左右する。チューターの振る舞いのバラツキはグループ間の学習成果に差を生むので改善が必要である。そこでチューターに客観的な討論達成度を示し、自身のファシリテートを振返る情報をフィードバックするシステムを開発することを目指してる。開発は次の手順である。(A)討論をビデオ撮影し、討論の様子とその議事録からシステム化を考慮した評価基準を決定する。(B)評価基準を前提に電子黒板に書かれた議事録を機械学習により分析して討論達成度をチューターにフィードバックするシステムを開発する。 2019年度は、今年度はPBLチュートリアルから分析に必要なデータの抽出を計画した。複数グループの議論の録画と、議事録に記録される情報について、具体的に本来記録されるべき情報がどの程度記録されるのか想定した。 また並行して、システムのプロトタイプ作成の準備を開始した。開発に必要な機械学習や深層学習の情報収集と、Pythonで効果的にデータを処理するために必要な情報の収集に努めた。 本研究は、7月に京都府立医大で開催された第51回日本医学教育学会大会のプレコングレスワークショップにて研究の概要を報告した。画像診断分野で発展が目覚ましいAI分野であるが、教育分野におけるAI活用の事例として紹介した。医学教育やPBLチュートリアルの研究者と情報交換ができ、本研究課題の参考となる情報が得られた。また12月に福岡市で開催された大学ICT推進協議会2020年度年次大会に参加した。本研究の成果は情報教育分野にも寄与できそうである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本学でのPBLチュートリアルのデータ収集に関わる具体的な計画立案に時間を要したことで、十分なデータ収集ができていない。議事録が持つ情報の質を検証するために、ビデオカメラで撮影するが、全グループで全ての授業回を録画はできるが、実際に見直して確認する時間が限られており、現実的ではない可能性がある。また、いくつか選んで録画する場合、特定のグループを固定して録画するのか、あるいは無作為に選んで録画した方が良いのか意見が出た。ディスカッションの良し悪し、つまりPBLチューターのファシリテートの質評価につなげるためには、録画できるだけ録画する必要がある。これは評価項目策定に関わる重要な要素であり、時間をかけて実施する必要がある。データ収集計画の時点で、進捗が停滞したことがあり、本来であればデータ収集が順調に進んでいる予定であったが、十分なデータは得られていない。 データ収集計画と並行して、システムのプロトタイプ作成の準備を開始した。開発に必要な機械学習や深層学習の情報収集と、Pythonで効果的にデータを処理するために必要な情報の収集に努めた。2019年度に開発用PCを選定して購入予定だったが、選定までは至らず、2020年度早々に購入予定である。 2019年7月に京都府立医大で開催された第51回日本医学教育学会大会のプレコングレスワークショップにて研究の概要を報告した。AI分野の教育分野への関わり方を示す1例として評価をうけた。次年度以降、教育分野の学術会議にて成果を報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に立案したデータ収集に関わる実施計画に基づき、PBLチュートリアルのデータ収集を実施する。しかし、本報告書作成時点で、COVID-19の対応のため授業スケジュールが変更されている。PBLチュートリアルも例外ではなく、2020年度に計画しているPBLチュートリアルの一部はオンラインによるディスカッション、グループワークが決定している。本学の場合、テレビ会議システムを用いずオンラインチャットによるディスカッションになるため、フレキシブルなディスカッションと異なり、討論の質に影響がでることが予想される。また、ホワイトボードや電子黒板にディスカッション内容が記録されず、代わりにオンラインの手書きボードソフトを共有する。加えて、通常よりも討論回数を減らした実施となる。通常のPBLチュートリアルと異なる環境のディスカッションが、討論の進展にどのような影響があるのか注意しなければならない。従って、2020年度に計画しているデータ収集で十分なデータが得られない可能性がある。 データ収集と並行してシステムのプロトタイプの構築を開始する。構築システムの機能には大きく分けると、1)手書き文字のテキストデータ化機能、2)チューターガイドの評価基準用データ化機能、3)課題テーマに関連した情報のデータ化機能、4)ソフトウェアのユーザインタフェースが必要となる。これらの機能を大きなモジュールとして開発し、プロトタイプシステムの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に機械学習を想定した開発用PCを購入予定だった。データ収集の実施計画を立案する過程で時間がかかってしまい、そのため購入機器の選定には至らなかった。2019年度の予算の多くは開発用PCの購入費用と、開発システムに必要な最新技術の情報収集のために参加予定だった講習会の参加費である。機器の購入および講習会参加が計画通り進まなかったために、予算と執行に大きな金額差が生じている。なお、購入予定の開発用PCは2020年度の早い時期に購入予定であるが、最新機器の動向を確認しつつ頂戴している予算を有効に活用できるよう鋭意努めたい。 なお、参加を計画しているAI技術関連のワークショップを始めとする講習会は、昨今のCOVID-19対応のため開催中止や、オンラインセミナー形式となる可能性が高く、予算執行の費用対効果を十分に勘案して、参加の可否を決める予定である。従って、感染対策の観点から2020年度の参加を見送り、2021年度以降に参加を計画する可能性がある。
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