全国60施設を対象として2020年1月~12月まで多施設共同前向き観察研究を実施し、37施設から780名が登録された。登録患者のうち、2022年2月28日時点で、調査票が確認できた701名を解析対象とした。解析対象者は、女性423名(60.3%)、平均年齢は、85.6±8.8歳であった。530名(75.6%)が自宅での訪問診療を開始し、訪問診療を必要とする疾患・病態は、認知症(208名、29.7%)、心疾患(98名、14.0%)、脳血管障害(85名、12.1%)などであった。訪問開始時の症状として、「中くらいあり・とてもあり・耐えられないくらいあり」の頻度が多かったのは、動きにくさ(390名、55.6%)、倦怠感(154名、22.0%)、食欲不振(138名、19.7%)などであった。12か月間の観察期間中に、在宅療養を中止した患者は、240名(34.2%)、在宅で看取った患者は、149名(21.3%)であった。訪問開始時と比較して、在宅療養中止時に、有意に「中くらいあり・とてもあり・耐えられないくらいあり」の頻度が増加した症状は、痛み、呼吸困難、倦怠感などであり、看取り時には、呼吸困難、食欲不振、眠気であった。初回訪問時には、動きにくさ、倦怠感などが日常生活に支障を与えている割合が大きく、頻度の順番は12か月間で変化はなかった。初回訪問時に比べると、在宅療養中止時、もしくは、看取り時には、呼吸困難など複数の身体症状が有意に増加する可能性が示唆された。非がん在宅高齢者は、動きにくさ、倦怠感などの症状が日常生活に支障を与えている頻度が多く、在宅療養を中止、もしくは、在宅で亡くなる患者においては、呼吸困難が日常生活に支障を与えることが多いことが示唆され、がん患者とは異なる苦痛や身体症状があることが推測された。
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