現在、特に先進諸国では、病院の閉鎖が、病院自身だけでなく、医療提供体制を管理する行政や、資金の貸手である金融機関等の利害関係者も含めた多くの関係者にとっての共通の問題となっている。本研究では、将来に渡る医療提供体制の安定化を支援するために、病院の経営危機を事前に予測するモデルを開発することと、当該研究分野を国際的に発展させるために、得られた知見を国際比較することを目的とした。 2023年度(本研究の最終年度)では、より信頼性の高い医療法人の倒産に関わるデータを目的変数として用いるために、医療法人の倒産に関わる情報を入手し、これまでに得られたデータセットとの突合を試み、その結果を評価した。 本研究では、医療法人が行政へ提出する財務諸表を主に用いた。この資料は、提出する際の内容の確認が厳密に行われておらず、これまでにその信頼性や妥当性について客観的な評価がなされていない。今後、このような既存資料が当該分野の研究に活用される機会は増えるものと思われる。本研究を通して、医療法人の財務諸表が現段階で研究活動(特に疫学研究)へ利用可能かを評価した。 病院の経営危機を予測するリスク要因として最も重要なものは、負債(長期負債と短期負債)の大きさである可能性が高く、本研究では、その相対危険の大きさを数量的に評価した。今後、当該分野を国際的に発展させるためには、医療法人が行政機関へ提出する財務諸表の信頼性や妥当性の確保が必要である。
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