研究課題/領域番号 |
19K10571
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
柳本 寛子 久留米大学, 医学部, 講師 (00441676)
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研究分担者 |
内村 直尚 久留米大学, 医学部, 教授 (10248411)
森田 喜一郎 久留米大学, 付置研究所, 客員教授 (20140642)
小路 純央 久留米大学, 付置研究所, 教授 (50343695)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 認知症 / もの忘れ予防検診 / ポケット嗅覚識別検査(UPSIT-J) / 軽度認知障害 / 早期診断 / 頭部MRI / 脳統計画像解析 |
研究実績の概要 |
【目的】超高齢社会において、認知症対策は喫緊の課題の1つである。認知症対策は予防や、早期発見・早期対応、重症化予防が重要であるが、しばしば本人の自覚の乏しさや、核家族化により家族の気づきの遅れ、本人、家族の受診への不安やためらいもあり、受診が遅れることも少なくない。またMMSEやHDS-R等のスクリーニング検査は、軽度認知障害など早期の段階では感度が低下するとの報告もある。さらに髄液検査や画像イメージング等の技術の進歩により、診断も素早く精度も高く検査可能であるが、侵襲度や装置を要する等の課題も多い。そのため我々は、平成17年度より認知症の予防や早期発見・早期対応を目的に、地域包括支援センターや久留米市と協働で、地域に出向いた『もの忘れ予防検診』を行い、スクリーニング検査、探索眼球運動やNIRS等の検査を施行し、介護予防事業との連携、専門医療機関への受診誘導などを行い、早期診断、早期対応に努めてきた。今回、嗅覚識別能と認知機能との関連性を明らかにし、嗅覚機能低下が早期発見、補助診断としての有用性について検討する。 【対象・方法】65歳以上のもの忘れ予防検診受診者(300名)及び久留米大学病院もの忘れ外来受診者(300名)を対象に、従来のポケット嗅覚識別検査(UPSIT-J)の 8項目に加え、新たに家庭用ガス,シップ薬、ベビーパウダー、線香等新たに8種類を加えた16種類のUPSIT-Jを施行し、HDS-R、MMSE、CDRや、頭部MRIによる脳統計画像解析を用いて解析した。 【令和2年度の実績】もの忘れ予防検診及び当院もの忘れ外来で、昨年度に続き上記検査を実施した。また現在までに蓄積されたデータ解析を進め、昨年度はHDS-R、MMSE、CDRから健常者、認知症者、中間群(低スコア群、高スコア群)に分け、また認知症の各診断基準に基づき、各疾患ごとに分けて解析し、一部学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究2年目である令和2年度についても、今回の世界的な新型コロナウイルス(COVID-19) による影響が今だに非常に大きく、特に令和2年度に計画していたもの忘れ予防検診は予定の1/3程度しか行えていない状況であり、またいつ再開できるかについても不明である。今度の対応については、久留米市や地域包括支援センターと協議中である。 また久留米大学病院もの忘れ外来での受診者についても、高齢者はCOVID-19のハイリスクグループであることにより、診療控えが実態であり、診療自体を診療間隔を伸ばして対応したり、ご家族のみでの受診になっていることも少なくない。このような現状下において、新規の患者さんの予約も従来通り受け付けていたが、事前キャンセルが相次いでいる。昨年より顕著に影響が出始め、実績として低下している現状である。新型コロナワクチンの1日でも早い接種が待たれる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究については、もの忘れ予防検診も久留米大学病院におけるもの忘れ外来にしても、高齢者を対象にしている。イタリアの報告からも、COVID-19の受け入れ病院での入院患者において、認知症自体が独立したCOVID-19での死亡リスクになるとの報告もあること(Bianchetti A, et al. J Nutr Health Aging. 2020 May 15.)、また久留米市内でのクラスター発生や、福岡県においても非常事態宣言が再度発令され、第4波の影響も考慮すれば正直無理に推し進めていくことが出来ないと考えている。 一方で認知症は早期診断・早期治療が重要であり、家族介護者の方への負担軽減からも積極的に診療を行っていくことが重要かつ必要である。そのため我々は出来る限りもの忘れ予防検診が行えるように協議を続けるとともに、もの忘れ外来でも新規患者の受け入れも継続していく。また本研究はもの忘れ予防検診における嗅覚識別検査の認知症早期発見の試みであるが、本研究を申請するにあたり、事前に嗅覚識別検査(UPSIT-J)は施行してきており、本研究の申請前のデータも活用は可能であると考えており、これらデータの解析も併せて行うことも検討している。 さらに今後高齢者に対するワクチン接種が進んで行けば、検査実施なども状況が改善されてくるのではと期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
もの忘れ検診受診者および久留米大学病院もの忘れ外来の受診者を対象に進めていく予定であったが、COVID-19の影響により、検診の中止、外来患者数の減少のため思うように研究のペースを進めることができなかった。また同様にCOVID-19の影響により学会がWeb開催となり、旅費が一切発生しない事となり、ここでの予定に大きな変更が生じた。今後については、情勢をみながら慎重に検討して行く予定である。
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