研究実績の概要 |
本研究では、介護保険における自己負担割合の改定が利用者の介護保険および医療保険サービスの需要に与える影響を明らかにすることを目的とし、福岡県介護保険広域連合および後期高齢者医療の被保険者の介護、医科レセプトデータを用いて分析を行った。 2015年8月の自己負担改定を基準に、2014年8月から2015年7月までを介入前、2015年8月から2016年7月までを介入後として、介入前の12ヶ月間に介護保険を利用した65歳以上の者を対象とした。対象者のうち、2015年8月の改定で自己負担割合が10%から20%に上がった群を介入群、10%のままの群を対照群に分類し、2群間の介入前後の介護保険および医療保険サービスの利用動向をinterrupted time-series analysis(ITSA)を用いて比較した。アウトカムは、一月あたり平均介護給付費(居宅、施設、地域密着型のサービス別)、医療費(入院、入院外、在宅)および診療実日数(入院、入院外、在宅)である。各指標は分母を母集団全体として算出した。 対象者191,785名のうち男性は51,013名(26.6%)、介入群は18,643名(9.7%)、対照群は173,142名(90.3%)であった。分析の結果、自己負担割合の改定により介護給付費の増加鈍化に群間差は認められなかったが、介入群では入院が増加し、入院外、在宅医療が減少していたことより、介護自己負担の増加による介護利用抑制と医療利用へのシフトあるいは抑制の可能性が示唆された。
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