研究実績の概要 |
本研究では、介護保険における自己負担割合の改定が利用者の介護保険および医療保険サービスの需要に与える影響を明らかにすることを目的とし、福岡県介護保険広域連合および後期高齢者医療の被保険者の介護、医科レセプトデータを用いて分析を行った。 最終年度は2018年8月の自己負担改定(2割から3割への引き上げ)を基準に、2017年7月から2018年7月までを改定前、2018年8月から2019年3月までを改定後として、改定前後の期間にそれぞれ介護保険サービスを利用した65歳以上の者を対象とした。対象者のうち、2018年8月の改定で自己負担割合が2割から3割へ上がった群を3割引き上げ群、2割のままの群を2割群として分類し、2群間の介入前後の介護保険および医療保険サービスの利用動向をinterrupted time-series analysis(ITSA)を用いて比較した。アウトカムは、一月あたり平均介護給付費(居宅、施設のサービス別)、医療費(入院、入院外、在宅)である。各指標は分母を母集団全体として算出した。 対象者8,658名のうち男性は5,981名(69.1%)、3割引き上げ群は3,469名(40.1%)、対照群は5,189名(59.9%)であった。分析の結果、観察期間中の介護給付費全体および居宅サービス費と入院外および在宅の医療費が3割引き上げ群のほうが高値であった。また自己負担割合改定後の介護給付費増加に群間差は認められなかったが、3割引き上げ群では在宅医療費が増加していたことより、介護自己負担の増加による在宅医療利用へのシフトの可能性が示唆された。
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