研究実績の概要 |
農薬への日常曝露は、子どもの神経発達へ悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。しかしながら、直接農薬散布の影響を受ける農村部とは異なり、都市部の子どもの日常的な曝露レベルでどのような影響がでるかを検討した研究は世界的に少ない。本研究は、我が国で多く使用されている有機リン系農薬、および、ネオニコチノイド系農薬に焦点をあて、これらの農薬への曝露と子どもの発達障害傾向スコアとの関連を検討することで、農薬曝露のリスクを評価することを目的に実施されている。有機リン系農薬曝露と子どもの神経発達との関連については、世界で数本の研究が報告されているが、結果が一貫していない。ネオニコチノイド系農薬については、研究自体がほとんど存在しないというのが現状である。 本研究では、7歳時に収集した尿のサンプルから有機リン・ネオニコチノイド系農薬の残留物質や代謝物を測定し、8歳時のコナーズ3Pの成績との関連を検討する。研究対象者は、「環境と子どもの健康に関するモニタリング調査(北海道スタディ)」の参加者で、2017年11月までに8歳に到達しており、且つ、尿検体やコナーズ3pおよび、妊娠初期や出産時の基本情報が揃っている参加者の中から、ランダムに抽出されるサブコホートとして事前に設定されている288名であった。 研究の最終年度である令和3年度は、288名分すべての尿中農薬残留物や代謝物の測定を完了した。測定した物質は、有機リン系農薬が6種(DMP, DEP, DMTP, DMDTP, DETP, DEDTP)であり、ネオニコチノイド系農薬が8種(ジノテフラン、ニテンピラム、チアメトキサム、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアクロプリド、アセタミプリド、アセタミプリド代謝物)であった。最終的には、これらの濃度と、コナーズ3pの発達スコアとの関連が解析された。
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