• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

脂肪細胞形質転換に起因した非アルコール性脂肪性肝炎発症と予防の分子メカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K10583
研究機関中部大学

研究代表者

那須 民江  中部大学, 生命健康科学研究所, 客員教授 (10020794)

研究分担者 北森 一哉  金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (80387597)
内藤 久雄  金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (90547556)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードNASH / 降圧剤 / メカニズム / プロテオーム / 脂肪細胞 / 形質転換 / 高血圧 / 高脂肪食
研究実績の概要

降圧剤(ヒドララジン)による非アルコール性脂肪性肝炎の進展予防の機序解明のため、10週齢の雄SHRを4群に分け、1.コントロール飼料群、2.降圧剤群、3.HFC群、4.HFC+降圧剤群(降圧剤介入群)とした(各群6匹)。このうち、各群3匹ずつ凍結肝臓をプロテオーム解析に用いた。主成分分析から各群の傾向を見たところ、降圧剤の影響は小さかった。その中でHFC摂取と降圧剤介入の有無で差があったものとして、マクロファージや線維芽細胞で合成が行われるα2-マクログロブリンが降圧剤介入により0.12倍、Collagen alpha-1(I) chainも0.38倍、Procollagen-lysine,2-oxoglutarate 5-dioxygenase 2(PLOD2)と呼ばれるプロコラーゲン生成に関与するマーカーが0.01倍未満と低くなっていた。これらは降圧剤による肝線維化抑制効果の先行研究の結果と一致していた。また、Wnt/GSK-3β/β-cateninの炎症シグナル系を軽減するCdc42-interacting protein 4蛋白発現がHFC摂取によりコントロール群に比べ0.01未満と抑制されていたが、降圧剤投与によりその抑制が解除されていた。脂質合成関連については、Fatty acid synthaseはHFCにより0.33倍、降圧剤では0.35倍と降圧剤の影響は認められなかった。一方、Fatty acid-binding proteinのadipocyteでは、HFCにより62倍に増加したものが降圧剤により15.8倍に抑制されていた。同epidermalもHFCにより9.1倍、降圧剤投与群では8倍増加、同liverではHFCにより0.2倍、降圧剤では0.31倍と低下を示したことから、降圧剤による予防効果は、肝細胞内ではなく脂肪細胞に強く出ていると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究は令和元年の結果に基づいて、脂肪細胞の形質転換と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)発症・進展との関係および降圧剤よる進展予防のメカニズムを明らかにすることであった。まず、SHRの高脂肪食(HFC)や降圧剤介入によって肝臓のどのようなタンパク質が動いているか探るためにプロテオーム解析をおこなった。凍結肝臓サンプルをRIPA Bufferを用いてホモジネートを作成した。100μg protein/100μLのサンプルから、アルキル化・酵素処理などを行い精製し、0.1%トリフルオロ酢酸溶液に溶解させ、nano LC-MS/MS Orbitrap Fusionで測定した。測定後、各群4サンプルのうちもっとも外れたデータを除き、各群3匹でプロテオーム解析を行った。その結果、2500のタンパク質が検出された。近年NASHの新規バイオマーカーとして注目されているCD44 antigenも検出され、HFC摂取によりコントロール群より100倍以上高値であり、降圧剤によりHFC+降圧剤群/HFC群比は0.75とやや改善傾向を認めた。主成分分析から各群の傾向をみたところ、降圧剤の影響は小さかった。その中でHFC摂取により降圧剤の有無で差があったものとして、概要に示すように降圧剤が絡む新たなタンパク質が検出された。また、降圧剤が肝細胞よりも脂肪細胞に関わっていることが明らかとなった。このように令和2年度の研究は、おおむね順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

令和元年度の研究において肝臓の脂肪染色を行った。その結果、降圧剤の介入は明らかに脂肪細胞数を減少させた。また生化学解析でも血清トリグリセリド濃度の上昇を抑制し、降圧剤が脂質代謝を抑制し、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)進展の予防効果を示すことを明らかにした。令和2年度の研究ではプロテオーム解析により、Fatty acid-binding proteinのadipocyteに影響を与えることが判明した。これは降圧剤が脂質細胞に対して影響を与え、NASH進展予防効果があることを示すものである。しかし、プロテオーム解析はもともとの発現量が少ないPPARαやPPARγたんぱく発現の解析には不適である。
今年度は、初期の計画通りに、Fatty acid-binding proteinのadipocyte、PPARαやPPARγおよびその上流や下流のたんぱく発現解析を行い、脂肪細胞の形質転換とNASH発症・進展との関係および降圧剤による進展予防のメカニズムを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

令和3年3月に参加を予定していた、富山市における第91回日本衛生学会学術総会がオンライン開催となったため、余剰金を繰り越した。次年度は分子生物学的変化を観察するための費用を計上したが、この試薬やキット類の中には値上げされた商品もあるので、余剰金は令和3年度の消耗品費に充てる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] One-Pot Extraction and Quantification Method for Bile Acids in the Rat Liver by Capillary Liquid Chromatography Tandem Mass Spectrometry2021

    • 著者名/発表者名
      Asano Tomomi、Taki Kentaro、Kitamori Kazuya、Naito Hisao、Nakajima Tamie、Tsuchihashi Hitoshi、Ishii Akira、Zaitsu Kei
    • 雑誌名

      ACS Omega

      巻: 6 ページ: 8588~8597

    • DOI

      10.1021/acsomega.1c00403

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 非アルコール性脂肪性肝炎に対する食事介入と降圧剤投与の有効性とメカニズム2020

    • 著者名/発表者名
      橋本沙幸、内藤久雄、那須民江
    • 雑誌名

      Medical Science Digest

      巻: 47(1) ページ: 64-67

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The antihypertensive agent hydralazine reduced extracellular matrix synthesis and liver fibrosis in nonalcoholic steatohepatitis exacerbated by hypertension2020

    • 著者名/発表者名
      Yuan Yuan、Naito Hisao、Kitamori Kazuya、Hashimoto Sayuki、Asano Tomomi、Nakajima Tamie
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 15 ページ: e0243846

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0243846

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi