研究課題/領域番号 |
19K10588
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研究機関 | 広島文化学園大学 |
研究代表者 |
中村 哲 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (40207874)
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研究分担者 |
翠川 裕 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (10209819)
翠川 薫 鈴鹿大学, こども教育学部, 教授 (20393366)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フィリピン共和国 / 水系感染症 / 日本住血吸虫症 / 媒介貝 / 台風災害 / 水環境 |
研究実績の概要 |
研究成果に関しては、昨年から引き続き、これまでの成果をとりまとめた論文を完成させ、来年度前半に雑誌に投稿する準備を整えてきたが、未発表にとどまっている。しかしながら、実質的な成果発表に関しては、新型コロナウイルス流行が中国重慶で始まり、フィリピンにおいて初めて患者が確認された時点でのタクロバン市の水道水の塩素濃度に着目した現地調査結果を第92回日本衛生学会学術総会にて発表した。その内容は、タクロバン市エリア内の8施設のトイレの蛇口から8つの水サンプルを採取し分析したものである。結果は、1宿泊施設(0.02)を除くすべてのサンプルで、残留塩素濃度の範囲と平均は0.14-0.65、0.43±0.21であった。平均以上の残留塩素濃度(>0.44)が見られたサンプルは公共市場や大型商業施設、ファストフード店、宿泊施設であった。また、0.2以上の濃度では細菌汚染は見られなかった。これらの結果から、塩素濃度が極めて低い場所は地下水を使用しているものと考えられた。タクロバン市の上水の塩素処理は概して良好で、COVID-19ウイルスの流行時期に市民のウイルス・細菌性下痢症感染を防ぐ上で、ある程度有益であると考えられた。 また2022年10月に開催される7th International Research Conference of WSDN (World Society of Disaster Nursing)に年度末にエントリーし、成果発表が確定した。内容は一昨年度実施した日本住血吸虫感染媒介貝存在水域の水質に係るの現地調査結果を発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は新型コロナウイルスの流行が昨年度より継続し、また易感染性の流行変異株が出現した影響下にあり、そのパンデミック状況は著しく増大した。このため調査対象国のカウンターパートは国家公務員であることから同症の地域対応に専念せざるを得ない状況となった。また彼らとの遠隔対応も極めて困難となった。加えて、フィリピン政府は厳格な地位隔離政策をとり、外国人の入国も極端に制限された。このため現地調査を実施することができず、計画した調査成果を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
一昨年度以降計画していた現地調査を再開し、昨年新たに確認された日本住血吸虫症患者発見地域での媒介貝の分布、感染率を明らかにすること。また可能であれば現地カウンターパートを広島の本学に招聘し、研究交流会を実施する。そして、これまでの環境水質調査およびレイテ中・北部地域の媒介貝分布地図成果に係る報告書を取りまとめる。これらを基とした新たな論文を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の新型コロナウイルス流行のパンデミック状況が増強し、フィリピン現地共同研究者研究活動が停止されたこと、およびフィリピン共和国への外国人入国が禁止されたことによる。したがって本研究実施の主要な支出は海外現地調査に必要な旅費および消耗品であることから次年度使用額が大幅に生じることとなった。また本年度開催された関係学会の多くが遠隔開催となり、国内出張費も余剰となった。次年度は研究計画に沿い、現地調査の遂行とカウンターパートとの研究交流並びに成果取りまとめによる報告書作成及び複数の論文発表を行う。
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