研究実績の概要 |
塩素系有機溶剤である1,2-ジクロロプロパン(DCP)やジクロロメタン(DCM)が使用されていた印刷事業場の従業員に胆管がんが多発したが、ヒトにおいてみられたこの胆管がんは動物実験では再現できていない。これはヒトと動物ではこれらの有機溶剤に関与する薬物代謝酵素の種類や発現量が異なることが考えられている。本研究は1,2-ジクロロプロパンの曝露により、胆管がんが発生するメカニズムを解明するために、ヒトiPS細胞由来肝細胞等や株化細胞を用い、ゲノム編集技術を使ったCRISPR sgRNAライブラリーによるノックアウトスクリーニングを行い、胆管がん発生に関与する遺伝子を探索することが目的である。2020年度はHepG2、MMNK-1への1,2-ジクロロプロパン曝露、HepG2とMMNK-1の共培養への1,2-ジクロロプロパン曝露を行い、DNA損傷マーカーであるγH2AXの蛍光免疫染色を行なった。HepG2、MMNK-1への高濃度の1,2-ジクロロプロパン曝露がγH2AXを生成させることが確認できたがセルカルチャーインサートを使った共培養では確認できなかったため、培養方法、曝露方法、曝露時間等を検討している。また、ノックアウトスクリーニングの準備として、ヌクレアーゼであるCas9の安定発現細胞株を作製するためにlentiCas9-BlastをMMNK-1にレンチウイルスベクターによる遺伝子導入を行った。
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