研究実績の概要 |
CRISPR-Cas9による遺伝子ノックアウトをゲノムスケールで行うことは、薬剤耐性など特定の表現型に関連する遺伝子を包括的に検出する。本研究はこの技術を応用し、胆管がん発生と関連するとされる1,2-dichloropropane (DCP)について、その毒性メカニズムを明らかにする第一歩として胆管由来細胞においてどのような遺伝子がDNA損傷と関連しているか明らかにすることを目的にDCPの代謝物を胆管由来細胞に曝露させた上でCRISPR sgRNAライブラリーによるノックアウトスクリーニングを行った。 網羅的に遺伝子を破壊するCRISPRライブラリーがパッケージされたレンチウイルスをヒト不死化胆管由来細胞株MMNK-1に導入し全遺伝子ノックアウト細胞集団を作成した。DCPをヒトiPS由来肝細胞であるReproHepatoの培養液に加え、その上清をノックアウトされたMMNK-1に曝露した。DNA損傷(二本鎖切断)が発生した細胞をセルソーターにより選別した。次世代シーケンサーによりsgRNAをカウントし、細胞のDNA損傷に関連する遺伝子群を探索した。DNA損傷と関連する314の遺伝子がノックアウトスクリーニングより同定された。 最終年度はそれら探索された遺伝子群についてウェブツールであるMetascapeを利用してエンリッチメント解析を行った。その遺伝子群のエンリッチメント解析の結果、Cellular response to reactive oxygen species、Regulation of TP53 activityなどのtermがエンリッチされていた。DCP曝露によるDNA損傷は活性酸素種によることが示唆された。細胞のストレス応答をノックアウトスクリーニングにより捉えることができた。
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