本年度の研究成果:人獣共通感染症原因菌 Escherichia albertiiの最適な分離・同定手法を確立するため、分離培養法の高精度化を図った。従来の下痢原性細菌の分離方法の評価は、比較する培地等へ対象細菌を接種し、最終的に分離される菌株の数を培地間で比較することで、比較する培地等の優劣を決定してきた。私どもは、「培養後の培地中の単位当たりの DNA 量に占める対象病原細菌特異的遺伝子のコピー数」を指標として、増菌培地の能力をより客観的に評価する新手法を開発した。この手法を用いて、 E. albertii の分離培養法の高精度化をおこなった。従来の培養法の性能評価に代わるより正確な評価法を開発した。 補助期間全体の研究成果:①化学性状等の確認。本菌に共通する生化学性状のうち、特徴的な性状を明らかにした。さらにリシン脱炭酸試験(リジン脱炭試験用培地使用)及びインドール産生試験の結果から、3つの生物グループに分類できることを提唱した。②本菌による食中毒事例の解析。典型的潜伏期間は12-24&時間、症状は watery diarrhea (>80%)、abdominal pain (50%-84%)、fever (37.0-39.5℃) (26%-44%)であった。③本菌の鞭毛発現について明らかにした。本菌を低栄養の培地にて、20℃程度で数時間から半日程度培養すると、鞭毛を発現し、運動性を示す菌株が存在することが明らかとなった。④薬剤耐性。国内分離株を対象に実施したところ、人由来株では、 7/27 株(NA・SM・TCのうちのいずれかまたは複数)に耐性が認められた。⑤培養法の高精度化を行った。以上、従来明らかでなかった本菌の特徴を明らかにし、また培養方法、同定方法にも改善する方法を提案した。これにより、本菌の実態がより明らかとなると考えられた。
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