研究課題
本研究では、「ミャンマー国内でのCPEの伝播・拡散状況について、分子疫学・地政学的視点で追跡・解明する」ことを本研究の主目的に設定し、ヒト・家畜・環境より検出されたCPE株について、プラスミドを含めた全ゲノム解析を行うことで、その感染経路の軌跡を辿ることを目指した。初年度には、ミャンマーに渡航(2020年1月)して現地のカウンターパートナー(保健省関連組織)との打ち合わせを実施し研究活動は順調な滑り出しであった。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックおよびミャンマー情勢によって現地調査を断念せざるを得ず、研究目的の大幅な軌道修正を要した。本研究課題に期待された成果を達成するために、日本国内で実施可能な研究内容への方向転換を図った。熟慮の結果、ミャンマーからの輸入食品をスクリーニングすることで同国におけるCPE蔓延状態を間接的に評価できると考え、輸入され小売・ネット通販されているReady-to-Eat食品(火を通さずにそのまま食べられる食品)を対象にCPEのスクリーニング調査を実施することとした。合計138の食品サンプルを調査したがCREは検出されなかった。本調査では、海外輸入食品が薬剤耐性菌の国内流入ルートになりうるという証拠を示すことはできなかったが、サンプル数が少ないことからその可能性を否定できるものではない。国際化が進む中、薬剤耐性菌対策は今後も国内外で考えていく必要があり、今後も調査を継続してその可能性を検討していく必要がある。