研究実績の概要 |
【耐性ウイルスの表現型、増殖能の評価】血漿検体から、個体内優勢株の薬剤耐性状況を知り、次いで、血漿を材料に初代培養細胞培養によるウイルスの分離・培養を試み、1週間後の最大増殖量を算定し増殖レベルとする試みを終了した。その結果、耐性株の流行状況を9.2%と推定した。耐性株を含む31株の分離株を得、PHAで刺激した末梢血単核細胞に感染・7日培養する実験系により、5.1x10^6-3.3x10^9copies/mLの幅の増殖レベルの違いを確認した。さらに、この増殖レベルは、患者血漿中のウイルス量に比例していた。このように、流行株の増殖能には大きな違いがあることが分かった。血漿HIV量の決定因子のひとつがウイルスの増殖能であることが強く示唆された。(Seiji Kageyama et al. JIAPAC 2019, 18: 1-8) 【薬剤耐性ウイルスの増殖能の違いと治療薬の選択】リバウンドした症例から得られたウイルス株を、新規処方候補薬剤存在下で初代培養し、有効血中濃度(既知)と比較して、増殖制御可能な治療薬を評価・選択する試みについて、高増殖能株と低増殖能株の比較検討を行った。その結果、試した4種の薬剤(Lopinavir, Tenofovir, Efavizenz, Emtricitabine)の全てについて、低増殖能株の方が効果が高かった。検出感度以下まで増殖を制御できたのは、Efavirenz(10microM)のみであった。さらに再現性と細胞の個体差による違いを検討する。 【ウイルスの増殖能と細胞内増殖制御因子】高増殖能株と低増殖能株の代表株を用いて、感染初代培養細胞内のウイルス制御因子の発現レベルを検討している。APOBEC3, SAMHD1, Tetherinに注目して解析を続けている。
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