研究課題/領域番号 |
19K10603
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
川口谷 充代 札幌医科大学, 医学部, 講師 (70733062)
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研究分担者 |
小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80186759)
漆原 範子 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (80396308)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / 無莢膜型肺炎球菌 / 肺炎球菌表層タンパク質 / 分子疫学 / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は蛋白結合型ワクチンの導入後における肺炎球菌の継続的な分子疫学調査に加え、莢膜を持たない無莢膜型肺炎球菌(NESp: nonencapsulated S. pneumoniae)の分子疫学的・遺伝学的特徴および薬剤耐性を明らかにすることである。本年度は2011年1月~2019年1月に分離収集した肺炎球菌4463株のうち、71株(1.6%)のNESpに対して、分子疫学・遺伝学的解析および薬剤感受性試験を行った。解析の結果、全無莢膜型株はNESpに特異的な遺伝子を保有し、その94.4% (n=67/71) がNCC1 [肺炎球菌表層タンパク質K (pneumococcal surface protein K: PspK) 遺伝子を保有] に、5.6%(n=4/71)がNCC2 (aliC、aliD遺伝子を保有) に分類された。MLST (Multi-Locus Sequence Typing) による分子系統解析を実施したところ、ST7502 (23.9%)、ST4845 (19.7%)、ST16214 (11.3%)、ST11379 (9.9%)、ST7786 (7.0%) の5つのSTでNESp全体の71.8%を占めていることが明らかとなり、これらは国内外で報告されているsporadicなNESp系統ST1106またはPMEN clone Denmark14-ST230に関連していた。加えて、薬剤感受性試験では、全NESp分離株において、88.7%が多剤耐性(3種類以上の異なる系統の薬剤に対して非感受性を示す)であることを確認した。本年度の研究において、本邦におけるNESpクローンの分布状況とこれらNESpが複数の系統の薬剤に非感受性を示す割合が高いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた無莢膜型肺炎球菌に特異的なpspK、aliC, aliD遺伝子の構造を明らかし、その遺伝子配列を世界的なデータベースGenBankに登録することで情報を公開するとともに、MLST解析に基づくNESpの分子系統とNESpの薬剤耐性状況を含有した研究成果を国際学術雑誌にて報告できたため。以上より、当初の研究計画書に基づいて、本研究の進捗はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまで継続して行なってきた分子疫学的研究の中で得られた莢膜保有の肺炎球菌の遺伝学的知見も含め、無莢膜型肺炎球菌における重要な病原遺伝子・薬剤耐性遺伝子等を更なる分子遺伝学的解析で詳細に調査し、今後の本研究の発展と方向性を検討しつつ解析を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年2月時点においてオープンアクセスジャーナルに論文投稿中ということもあり、その掲載費用等を年度末まで確保したため。清算後の未使用残額分は次年度の研究費に合わせ、解析に必要な試薬・物品の購入および研究成果を発表するための関連費用等に充て研究を推進する。
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