研究課題/領域番号 |
19K10606
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
苣田 慎一 杏林大学, 医学部, 学内講師 (90639791)
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研究分担者 |
吉田 正雄 杏林大学, 医学部, 准教授 (10296543)
苅田 香苗 杏林大学, 医学部, 教授 (40224711)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / メダカ / 添加物 / ポリエチレンビーズ |
研究実績の概要 |
2021年度以降は、マイクロプラスチック(MP)の曝露量の表記に関して、水槽中の濃度(0.009、0.032、0.065、0.32、0.65 mg-MPs/L)としての表記から、それに相当する経口曝露量(0.07、0.27、0.5、2.5、5.0 mg-MPs/g-体重)としての表記に変更した。2021年度は、経口曝露後にMPから生体に漏出する成分の検討を行った。まず、経口摂取後に排泄されたMPの成分を詳細に分析した結果、添加剤として含まれていた7種の疎水性化合物(食用容器や農具にも使用される可塑剤や難燃剤など。) が消失していたことが分かった。水に難溶な疎水性化学物質は、飼育水でなくメダカの体内で溶出した可能性が高いと考え、生体7種の疎水性化合物のうち2種(リン酸トリクレジル、アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル])に関して、生体内での検出を試みた。2種に限った理由は予算の都合による。生体は比較的大きい臓器の肝臓を選択した。検出はGC/MS分析で行った。2.5 mg-MPs/g-体重曝露群において、肝臓からMP由来のリン酸トリクレジルとアジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]が検出された。つまり、経口摂取されたMPから生体に、MP由来の添加物が移行する証拠が得られた。前年度までに、2.5 mg-MPs/g-体重曝露群では、生体影響として、成長の抑制、産卵数の減少、ふ化率の低下、眼と腎では酸化ストレスが関連する病変の発生が観察されていた。従って、MPの経口曝露による生体影響の原因は、MP自体によるもの、もしくは、MPから漏出した化学物質によるもの、という2案を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、マイクロプラスチック(MP)の経口曝露後に生体に漏出する成分について、学会で報告した。現在、添加物を含まないMP等を用いて、それらの経口曝露による生体影響の解析を進めている。糖尿病合併症へのMPの影響を調べるために、血管をGFP標識した糖尿病メダカを飼育維持している。今後曝露実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に関わる実験は、長期間(12週間~30週間)の飼育を必要とする。従って、研究を推進するために、より効率的に試験を行うためのスケジュール管理を徹底する。また、添加物を含まないMPによる生体影響の解析のため、予定していた旅費の一部を解析費に追加する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はおおむね順調に研究をすすめ研究費を使用したが、MP曝露による生体影響の追試が必要となった。当初旅費として申請した費用をこの費用に充てる。コロナウィルスによる活動自粛のため、出張に係る費用をこれに充てる。
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