もやもや病は、頭蓋内内頚動脈終端部の狭窄と「もやもや血管」とよばれる異常血管網形成によって特徴づけられる脳血管疾患であり、日本をはじめ世界中で若年性脳卒中の主たる原因として知られている。我々はRNF213遺伝子をもやもや病の感受性遺伝子として同定した。RNF213の生理的およびもやもや病の病態に果たす役割の大部分が未解明であるが、RNF213変異(遺伝要因)に、炎症・感染等のストレス負荷(環境要因)が加わることが発症に関与する可能性を示唆されている。 前年度までに、炎症関連物質Poly(I:C)の投与をRnf213 KOマウス、Rnf213変異 knock-inマウスに行ったが健康状態や血管系の形態、血管機能関連分子に対する顕著な影響を認めなかった。そこで、別のストレス負荷として小胞体ストレスに注目し、KOおよびKIマウス由来の培養細胞(MEF)に小胞体ストレス誘導試薬による処理を行った。その結果、RNF213欠損が小胞体関連分解に重要な役割を果たすSEL1Lを誘導して、小胞体ストレスを軽減することが明らかとなった。また膵β細胞に小胞体ストレスが発生するモデルマウス (Akitaマウス)とRnf213 KOマウスを交配して得たRNF213 KO/Akitaマウスを用いた実験を行い、in vivoでも小胞体ストレス軽減とSEL1L増加を証明した。この成果を論文報告し、さらにRNF213変異は逆に小胞体ストレスを誘導する可能性が示されたため、現在詳細を検討中である。今後は、Rnf213 KOマウス、Rnf213 変異knock-inマウスに小胞体ストレス誘導試薬を投与して血管系を中心に表現型の探索を行っていく。
|