研究課題/領域番号 |
19K10609
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
坂 晋 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (30399828)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 交互作用 / 環境因子 / 栄養因子 / 生殖発達 |
研究実績の概要 |
多くの女性成人疾病のリスク要因である生殖発達の撹乱の原因を解明することは、女性成人疾病の予防上重要である。女性生殖発達には、多様な因子が視床下部‐下垂体、卵巣、子宮等への作用を介して交互的に作用するにもかかわらず、交互作用による女性生殖発達の撹乱に関する基礎研究は非常に不足している。そこで、女性生殖発達の撹乱因子として、最近の疫学研究で相次いで報告されたパラジクロロベンゼン(pDCB)曝露と低ビタミンDに着目し、胎仔期・幼若期における環境因子と栄養因子の交互作用による雌性生殖発達の撹乱、機序の解明を通じて、ヒト成人女性の疾病予防のための基礎知見を提供すること目的として、本研究を実施した。 本年度は、胎仔期におけるpDCB曝露による雌性生殖発達撹乱への影響についての詳細な検討のために、コントロール群、低曝露群(2 mg/kg)、高曝露群(20 mg/kg)の3群に分類した妊娠Wistarラットに対して、妊娠2~20日の期間にpDCB投与実験を実施した。その結果、妊娠ラットへのpDCB曝露により、出生した仔の性成熟の早期化ならびにその後の異常性周期の増加が起こることが明らかとなった。また、8週齢時において、卵巣遺伝子cyp19a1をはじめとしたエストロゲン代謝に関与する遺伝子の発現量が変動しており、性成熟の早期化や異常性周期の増加には、エストロゲンへの影響を介している可能性が示唆された。以上の結果をふまえて、当初予定していなかった性成熟の指標である膣開口以前の4週齢時におけるエストロゲンへの影響について、検討を進めている。また、栄養因子による低ビタミンDによる雌性生殖発達撹乱への影響についての実験系の構築を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、胎仔期におけるpDCB曝露による雌性生殖発達撹乱への影響について出生後8週齢における組織を用いて検討した。しかし、その結果から、当初予定していた8週齢時における影響に加えて、膣開口以前の4週齢時における影響についても調べる必要が生じた。そのため、当初の予定よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに、環境因子による雌性生殖発達撹乱への影響として、幼若期と胎仔期におけるpDCB曝露による雌性生殖発達撹乱への影響についてそれぞれ検討した。 次年度は、栄養因子による雌性生殖発達撹乱への影響として、胎仔期における低ビタミンDによる雌性生殖発達撹乱への影響について検討する。具体的には、胎仔期における低ビタミンDの状態を設定し、出生後の膣開口や性周期、卵胞発達などへの影響などへの影響を調べる。その後、pDCBとビタミンDを用いて胎仔期における環境因子/栄養因子の交互作用による雌性生殖発達撹乱について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により旅費の支出を予定してた学会が中止となったことや当初予定した研究の一部がやや遅れたことなどにより、次年度使用額が生じた。
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