研究課題/領域番号 |
19K10610
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
大和 浩 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (90248592)
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研究分担者 |
姜 英 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (70637595)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 加熱式タバコ / 受動喫煙 / ガス状物質 / 粒子状物質 / 改正健康増進法 |
研究実績の概要 |
2020年4月に全面施行された改正健康増進法では、飲食可能な加熱式タバコ専用室の設置が容認された。しかし、申請者の予備実験では加熱式タバコからも受動喫煙が発生することが明らかであり、加熱式タバコ専用室のある飲食店で働く従業員は、接客時に受動喫煙が発生することが懸念される。また、大企業では、複数ある喫煙室の一つを加熱式タバコ専用喫煙室に転換した事例が散見される。これらの動きは、加熱式タバコを容認し、紙巻きタバコから加熱式タバコへのシフトを促し、結果として喫煙者の禁煙企図を阻害することに繋がる。 そのような動きを抑えるために、本研究は以下の3点を目的とする。 1)加熱式タバコからもニコチンや発がん性物質を含む受動喫煙(粒子状物質、および、ガス状物質)が発生することを客観的なデータで示すこと、 2)加熱式タバコを特別扱いせず、紙巻きタバコが禁止されている場所では加熱式タバコも使用禁止、という社会規範を醸成し、改正健康増進法で容認された「飲食が可能な加熱式タバコ専用室」を廃止する法律の再改正に繋げること、 3)加熱式タバコの規制を強化することで、紙巻きを含むタバコ製品の使用を中止し、禁煙する人を増やすこと、である。 令和元年度、某企業に設置された加熱式タバコ専用室の調査から、大量の粒子状物質とガス状物質が放出されること、ただし、粒子状物質は液体のミストであり、室温で気体(ガス)に変化するため加熱式タバコの受動喫煙を評価するためにはガス状物質の測定が必須であることが判明した。令和2年度は、ガス状物質を測定するための測定機器の準備を整えた。ところが、新型コロナウイルスの蔓延により実際の飲食店や企業の喫煙室の調査が出来ない状況が続いている。令和3年4月時点でもコロナの状況が改善しないため、模擬喫煙室で加熱式タバコの受動喫煙を測定する実験に切り替える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年、加熱式タバコ専用室を設置した某企業において、その内外の粉じん濃度とガス状物質の測定を行ったところ、加熱式タバコ専用室の内部の粉じん濃度は一時的に高くなるが、ただちに気体に変化するため急速に低下すること、その結果、加熱式タバコ専用室内には高濃度のガス状物質が充満していること、さらに、加熱式タバコ専用室内のガス状物質は喫煙者の出入りに伴い喫煙室外に漏れていることがリアルタイムモニタリングにより確認できた。なお、予想通り、喫煙室外での粒子状物質は検出されなかった。 令和2年度、加熱式タバコ専用室を設置した飲食店や企業での実際の測定を予定していたが、4月に1回目、令和3年1月に2回目の緊急事態宣言が発出されたため、実地調査が出来ない状況が続いた。そのため、使用出来なかった研究費は令和3年度に繰り越した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年4月23日時点で、関東や関西の複数の自治体で新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置がとられる見込みであり、産業医科大学(福岡県北九州市)でも職員に対して不要不急の外出は控えるように指示が出されている。当分の間、この状況が改善する見込みはないため、学内の模擬喫煙室を飲食店や企業の加熱式タバコ専用室と見立て、加熱式タバコをシリンジで吸引、エアロゾルを放出する実験的な測定を行い、専用室内外のガス状物質加熱式タバコから発生している化学物質の同定とそれぞれの濃度を明らかにする実験的な研究に切り替え予定である。 本研究から、加熱式タバコの喫煙室を撤廃するために有用な情報が得られる見込みであり、申請者が3,500名を対象に発信しているメールマガジン、および、新聞・テレビ等を通じて社会全体に情報提供をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実地調査、成果発表及び情報収集の目的で旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染拡大防止の移動規制により実施できなかった。繰り越した研究費は、大学内の模擬喫煙室で加熱式タバコの実験的調査をおこなう際の消耗品や試薬の購入、および、実地調査が可能になった場合の旅費等に使用する予定である。
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