研究課題
小児期発症の脳炎は神経学的後遺症を残す疾患であるが、原因不明な症例が多く、疫学に関する知見も限定的である。我々は、ウイルスや細菌に起因する感染性脳炎、特異的自己抗体による自己免疫性脳炎や中枢脱髄性疾患を系統的に分類するために、GFP検出システムを用いた細胞ベースアッセイ法とFilmArray髄膜炎・脳炎パネルを組み合わせた実験系を確立した。この実験系を用いて、研究期間中に福岡県内の医療機関との共同研究を行った。原因の特定されていない小児脳炎患者の髄液検体より、原因ウイルス5例、NMDA受容体抗体6例を同定できました。主に成人患者に見られるLGI1抗体、CASPR2抗体、DPPX抗体、AMPA1/2受容体抗体、GABAB受容体抗体を検出することができなかった。また、自己免疫性脳炎や中枢脱髄性疾患が疑われている患者の血液検体からは、MOG抗体15例を検知し、MOG抗体関連疾患と確定診断することができた。自己抗体を迅速に探知し、各医療機関にフィードバックすることで、迅速に病態に応じた特異的治療を始めることができた。小児脳炎において最も検出頻度の多い自己抗体であるMOG抗体の病態解明はいまだに不明である。我々はMOG抗体関連疾患の髄液検体を用いて、網羅的脂質代謝とサイトカイン解析を行った。非脱髄性疾患と比較し、異なる脂質プロファイルを呈することを明らかにした。今後は特異的代謝経路が判明できれば、MOG抗体関連疾患の病態解明や新規治療の検討に展開が期待される。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)
BMC Neurol
巻: 24 ページ: 17
10.1186/s12883-023-03493-z
Pediatr Neurol
巻: 152 ページ: 11-15
10.1016/j.pediatrneurol.2023.12.010
Pediatr Res
巻: 95 ページ: 233-240
10.1038/s41390-023-02778-w
Eur J Pediatr
巻: 182 ページ: 3175-3185
10.1007/s00431-023-04989-z