研究課題/領域番号 |
19K10618
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
松井 克之 滋賀医科大学, 医学部小児科学講座, 講師 (60595924)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小児糖尿病 / 糖尿病療養行動 / 生活の質 / 認知機能 / 精神心理 |
研究実績の概要 |
本研究は小児1型糖尿病の治療内容と治療成績、病態の多施設共同研究を行っているコホート研究の組織である小児インスリン治療研究会で行う補完研究である。研究を実施するに当たり、療養環境やQOLの評価に加え、小児インスリン治療研究会内で本研究に心理・精神面の評価も追加することになったため、当初の計画に追加して認知機能(発達障害・知的レベル)・精神心理(摂食障害や精神疾患)の調査も行うこととなった。さらに自己管理能力・生活環境・生活の質に関する自記式調査において、アンケート用紙で調査した場合には回答漏れが多くなり、Webアンケートを主体として利用することに切り替えた。
これら変更内容の小児インスリン治療研究会での承認を経て、同研究会の主幹施設(埼玉医科大学病院)での倫理委員会への申請を進めた。2020年1月に同委員会にて承認された。その後、小児インスリン治療研究会参加施設へ本研究への参加および各施設での倫理委員会承認の依頼を行っている。
また、小児インスリン治療研究会第5コホート登録時データで就学就園している1型糖尿病患児の療養行動の実態を調査した。対象者は1,100人で平均HbA1cは8.01%であった。HbA1cは年齢や学校種別(園、小学校、中学校、高校、大学等)では有意差を認めず、血糖自己測定(SMBG)回数が少ないほど有意に高かった。学校・園での自己注射・SMBGを実施する場所は教室30.6%、保健室48.0%、トイレ6.9%、それ以外の部屋9.6%、実施しない5.0%であり、トイレで実施している場合のHbA1cは8.57%と有意に高く、自己注射が行われていない可能性や心理面の問題などが示唆された。しかし、これらは医師が聞き取っての調査であるため実態とことなる申告がされている可能性がある。実際の療養行動やQOLを合わせて評価するため本研究を推進していく必要性が認識された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述したように本研究において認知機能、精神心理の調査も行うこととなり、さらにWebアンケートを中心に行うことから当初の研究計画に変更を加えた。これら変更内容をインスリン治療研究会で承認いただき、主幹施設(埼玉医科大学病院)での倫理委員会への申請を行ったが、これらに時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
自己管理能力・生活環境・生活の質に関する自記式調査はGoogle社のG-suiteサービスであるグーグルフォームを用いたWebアンケートを主体として行う。施設によりこれが利用できない場合には従来どおりアンケート用紙にて行う。認知機能(発達障害・知的レベル)・精神心理(摂食障害や精神疾患)に関する調査は2020年7月~2023年3月までの間に一度実施する。発達障害に関しては自記式調査紙「発達障害スクリーニングのための質問紙(文科省作成児童生徒の困難の状況質問紙)」を保護者に、自記式調査紙「EAT-26」「EDI」を研究参加者もしくは保護者に記載いただく。知的レベルは検査施行の有無や結果を、精神疾患に関しては合併の有無や内容を研究責任者もしくは分担者に記載いただく。
今後の課題としては新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い、小児インスリン治療研究会参加施設での倫理委員会申請や研究の実施に支障が生じる可能性があり、状況によっては調査開始を遅らせる必要が出る可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査開始を遅らせたため、当初予定していた、アンケート実施協力謝金やデータ入力謝金が発生しなかったため次年度使用学が生じた。本研究は小児インスリン治療研究会にて行い、同研究会のコホート研究のデータも一部利用することになっているが、同研究会の次年度の運営資金が従来より減少することから、データ管理資金の一部を当研究費から負担することも必要となった。
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