研究課題/領域番号 |
19K10624
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
指宿 りえ 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90747015)
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研究分担者 |
嶽崎 俊郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50227013)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NAFLD / NASH / 肝線維化 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
本研究では、一般住民における非アルコール性脂肪性肝疾患の脂肪肝の経過における表現型と肝線維化に関わる要因について明らかにし、個別化予防対策に質することを目的とした。今年度は、NAFLD/NASHと環境・宿主要因に関する横断研究を行った。栄養学的要因の1つとして、エネルギー代謝に関わるβ2アドレナリン受容体(BAR2)とβ3アドレナリン受容体(BAR3)の遺伝子多型を用いて、NAFLDに対する肥満と宿主要因との相互作用を検討した。対象者は、35~69歳の男女1,056名(男254名、女802名)である。宿主要因は、BAR2のC/G多型(rs1042714)とBAR3のC/T多型(rs4994)についてTaqMan PCR法で解析した。NAFLDは、全体の45.2%に認められた。BAR2のCC群では、肥満有りのORは9.04(6.58-12.42)、CG&GG群で6.74(2.34-19.42)、BAR3のTT群では8.40(5.67-12.46)、TC&CC群では9.50(5.90-15.32)であったが、いずれも相互作用は統計学的に有意ではなかった。次に、PNPLA3遺伝子多型を用いて、NAFLD肝線維化における環境要因と宿主要因に関する研究を行った。対象者は、35~69歳の男女295名(男98名、女197名)である。環境要因は、NAFLDとの関連が報告されている項目、宿主要因はPNPLA3のC/G多型(rs738409)をTaqMan PCR法で解析した。肝線維化の指標は、FIB4 Indexが1.30以上を肝線維化ありと定義した。NAFLD対象者で肝線維化有りは73.2%に認められた。肝臓での中性脂肪の異化抑制に関わるPNPLA3の遺伝子多型は、肝線維化と直接の関与は認められなかったが、脂質異常症との間に相互作用が認められ肝線維化に脂質代謝の関与があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はベースラインデータを用いて横断研究を行った。まずは、本研究でのNAFLD有りを症例群、無しを対照群と定義できた対象者で、genotypeが判定できているものについて解析を行った。その結果、NAFLDに対する肥満とBAR2とBAR3遺伝子多型との相互作用は認められなかったことから、NAFLDとエネルギー代謝の遺伝要因との関連はない可能性が示唆された。次に、前向き研究で肝線維化に関連する宿主要因の検討を行うため、PNPLA3遺伝子多型を用いて、NAFLD肝線維化における宿主要因、及び環境要因との相互作用について横断的に解析を行った。その結果、NAFLD肝線維化にPNPLA3遺伝子多型と脂質異常症の相互作用が認められた。以上の結果から、肝線維化に関する前向き研究を行うための、肝線維化進展に関わる環境・宿主要因についてのエビデンスを得ることができた。今後、解析対象者の解析数を増やして今回の結果を基に引き続き検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
肝線維化に関する前向き研究を行うために、今回得られた結果を基にベースライン時での解析対象者を増やして、宿主要因としてPNPLA3のSNP 解析を行い横断的に検討する。ベースライン時からの第二次調査まで追跡可能な対象者を選出し、持続群、発生群、消失群を決定し、前向き研究のデータセットを整理する。NASH/NAFLD の進展を前向きに追跡した対象者の保存血清を用いてM2BPGi、IL-6、TNF-αを測定する。
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