研究課題/領域番号 |
19K10624
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
指宿 りえ 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90747015)
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研究分担者 |
嶽崎 俊郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50227013)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NAFLD / 肝線維化 / PNPLA3 / 交互作用 |
研究実績の概要 |
PNPLA3遺伝子多型のC/G多型(rs738409)を用いて、NAFLDの肝線維化に対する環境要因と遺伝的要因の間の相互作用について横断研究を行った。対象者は2005年~2006年にJ-MICC研究の鹿児島県島嶼地域におけるベースライン調査に参加した健診受診者で、腹部超音波検査を受け、genotypeが同定できないものを除外した、NAFLDである35 ~69歳の男女295名 ( 男98名、女197名 )である。遺伝要因は、TaqMan PCRで解析し、肝線維化はFIB4-index(<1.3;線維化無し、≧1.3;線維化有り)を用いて評価した。統計的解析は、ロジスティック回帰モデルを用いて、性、年齢と関連要因で調整し、オッズ比(OR)を推定した。NAFLDの平均年齢は55.1歳で、73.2%が肝線維有りだった。肝線維化に対する環境要因との関連は、喫煙(OR = 2.19、0.68-7.01)、高血圧(OR = 1.66、0.84-3.28)、および遺伝的要因のPNPLA3 GG allele群(OR = 1.60、0.80-3.21)でORが上昇していたが、関連は認められなかった。肝線維化に対する遺伝要因と環境要因との間の交互作用では、PNPLA3 GG allele群において高血圧(OR = 9.25、1.38-61.88)および脂質異常症(OR = 11.91、1.81-78.41)の有意なORの上昇が認められ、脂質異常症で有意な相互作用が認められた。(P for interaction= 0.01)。 今後、TM6SF2遺伝子多型のC/T多型(rs58542926)とPNPLA3遺伝子多型を用いて前向きに環境要因と遺伝的要因との関連について検討する。現在、NAFLD有りを症例群、無しを対照群と定義し、2つの遺伝子多型を用いてTaqMan PCR法で解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
横断研究で、NAFLDにおける肝線維化に対するPNPLA3遺伝子多型C/G多型(rs738409)と脂質異常症との有意な交互作用が認められた。この結果を踏まえ、ケースコントロール研究として前向きに肝線維化進展に関わる環境・宿主要因及び、交互作用について検討する。横断的と前向きの両方で検索するためのデータベースを作成する。最近、エキソームを網羅的に解析するEWASにより、肝内の脂肪沈着、ALT値、ALP値、中性脂肪値の上昇などに関与するとされる、TM6SF2遺伝子多型のC/T多型(rs58542926)が報告された。このTM6SF2遺伝子多型のC/T多型を新たに宿主要因に加えた。TM6SF2遺伝子多型のC/T多型とPNPLA3遺伝子多型のC/G多型の2つを用いて、宿主要因の解析を行う。対象者の数を大きくし、新たにDNA抽出を行った。PNPLA3遺伝子多型とTM6SF2遺伝子多型についてTaqMan PCR法で解析中であり、終了間近である。あわせて、血清中のIL-6、TNF-αの解析も行う。
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今後の研究の推進方策 |
PNPLA3遺伝子多型のC/G多型(rs738409)と、TM6SF2遺伝子多型のC/T多型(rs58542926)の2つの遺伝子多型とIL-6、TNF-αの解析を終了する。ケースコントロール研究として前向きに肝線維化進展に関わる環境・宿主要因及び、交互作用について検討するために、横断的と前向きの両方で検索するためのデータベース作成を完了する。肝線維化及び、肝線維化の進展に対する環境要因、宿主要因との間の関連、及び交互作用について検討し、NASH/NAFLD の進展予測に関して解析を行う。症例対照研究、前向き研究、及び進展度の予測因子に関する解析を完了する。結果を学会、論文等で発表した後に、全体の結果を市町村やホームページなどを通じて、広報し、フィードバックする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の影響により、国内の学会、研修会が全てオンライン形式で開催されたため、学会参加費のみの経費であったこと、予定していた国際疫学会が延期になり次年度の開催になったため必要経費が繰り越しになった。また、PCRを行うための消耗品や試薬が注文不可能や、注文後の未納品のケースも多く、納品にかなりの時間を要した。次年度は、予定している学会や研修会への参加、解析に必要な実験試薬と消耗品、データ管理のためのPC関連機器を購入する。また執筆中の論文の英文校正、投稿費に使用する。
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