研究課題/領域番号 |
19K10627
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
大間々 真一 岩手医科大学, 医学部, 講師 (20453300)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脳卒中登録 / DPC / 電子カルテ / 悉皆調査 |
研究実績の概要 |
2020年度は下記を実施した。 ①本研究者、岩手医科大学衛生学公衆衛生学講座、岩手県保健福祉部、電子カルテシステム作成会社(株式会社アイシーエス)を構成員とする本研究に関するワーキンググループを6回開催し、DPCに記載されている傷病名より脳卒中登録対象患者を抽出し、抽出された患者のDPC情報および診療報酬情報を用いて、脳卒中登録票を自動的に作成する、脳卒中登録票作成支援システムを構築した。 ②脳卒中登録票作成支援システムを岩手県立二戸病院で仕様説明、デモンストレーション、および検証を行ない、同システムの仕様変更と改修を行った。 ③調査員およびリサーチナースにより、岩手県全域の医療機関と岩手県に隣接する地域の医療機関で、2019年4月1日から2020年3月31日の間に急性期脳卒中を発症した岩手県在住者について岩手県地域脳卒中登録の悉皆調査を実施した。 ④悉皆調査を行った岩手県地域脳卒中登録データを解析し、全ての登録例のうち、DPCデータを提出している病院からの登録例が95%であり、DPCを利用した脳卒中登録は高い悉皆性を持つ可能性を明らかにした。また、実際に登録された症例を基準として本研究で作成した脳卒中登録票作成支援システムにより抽出された脳梗塞症例では感度90%、特異度92%、陽性反応的中率 96%、出血性脳卒中では感度84%、特異度82%、陽性反応的中率 95%と高い精度であった。この結果を第46回日本脳卒中学会学術集会で発表した。 ⑤悉皆調査を行った岩手県地域脳卒中登録データを解析し、2011年の東日本大震災直後に増加した津波被災地の脳卒中は、震災翌年以降は減少したことを明らかにし、英文医学雑誌Cerebrovascular Disease Extraにて論文発表し、第46回日本脳卒中学会学術集会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年1月より拡大した新型コロナウイルス感染の蔓延防止の非常事態宣言、および、岩手県内でも同ウイルスによる感染が医療機関職員より検出されたため、医療機関への訪問や出張、および対面での会議開催が一時期制限された。そのため、脳卒中登録票作成支援システムに関するワーキンググループ開催と、岩手県立二戸病院での仕様説明、デモンストレーション、および、検証の実施時期が当初の予定より遅れ、本度末に実施となった。 本年度に、岩手県立二戸病院以外のDPC参加医療機関へ脳卒中登録票作成支援システムの導入は翌年度以降に繰り越しとなった。 岩手県全域および岩手県に隣接する地域で、岩手県在住者で2019年4月1日から2020年3月31日までの急性期脳卒中罹患者の悉皆調査は当初予定通り実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方法は以下の通りである。 ①2021年度はリサーチナース、および、調査員により岩手県全域および岩手県に隣接する地域で、岩手県在住者で2020年4月1日から2021年3月31日までの急性期脳卒中罹患者の悉皆調査を実施する。 ②岩手県内の複数のDPC参加医療機関で、本研究の趣旨および脳卒中登録票作成支援システム導入の説明と協力要請を行う。 ③協力の同意が得られた医療機関で従来の調査員およびリサーチナースにより脳卒中登録悉皆調査を行う際に、本研究で作成した脳卒中登録票作成支援システムを使用して脳卒中登録の対象患者抽出を行い、調査員およびリサーチナースの調査により抽出された登録対象者と、本システムで抽出された登録対象者の比較を行い、抽出精度と診断精度の検証を行う。 ④本研究で作成した脳卒中登録票作成支援システムについて学会発表と論文発表を行う。⑤その他の医療機関では従来通り、2020年4月1日から2021年3月31日までに発症した岩手県在住者の急性期脳卒中罹患者の脳卒中登録悉皆調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳卒中登録悉皆調査のリサーチナース、調査員の人件費、および謝金が、東北岩手メディカルメガバンクより支出されたため、本研究よりの支出が不要となった。 また、新型コロナウイルス感染蔓延のため、研究成果発表学会がオンライン開催となったため、現地までの旅費の支出が不要となった。 研究成果の論文発表を行った英文雑誌の掲載費用、およびオープンアクセス化費用が無料のため、それらの支出が不要となった。 次年度では、脳卒中登録悉皆調査のリサーチナース、調査員の人件費、および謝金が、今年度と同様に東北救急医学会より支出される予定のため、その支出は不要の予定である。研究成果の学会発表の旅費、および、論文発表の英文校正、論文掲載費、オークファンとして支出予定である。
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