研究実績の概要 |
本研究は、がん医療の質を評価するプロセス指標の1つである診断から治療開始までの待機期間の現状と関連する特性を明らかにすることにより質の改善に寄与することを目的とする。この待機期間が長くなることは患者の不安を増大させるだけではなく、予後にも影響するとの報告がある。今年度は北信4県(富山、石川、福井、長野)に位置するがん診療連携拠点病院(拠点病院)等の院内がん登録データとDPC調査データから構成される北信がんプロがんデータベースの2016年と2017年の診断症例のデータを用いて胃、大腸、肺、女性乳房について待機期間に関連する要因を検討した。 対象症例数は19施設の胃1,967例、大腸2,860例、肺3,321例、女性乳房3,185例の計11,333例である。診断日から治療開始日までの期間の中央値(四分位範囲)は胃33日(22日―47日)、大腸27日(18―41日)、肺31日(18日―49日)、女性乳房44日(31日―62日)、診断から治療開始までの期間が30日を超えた長期待機者の割合は胃53.7%、大腸42.9%、肺50.6%、女性乳房75.7%であり、女性乳房で長期待機者の割合が多い傾向を認めた。マルチレベルロジスティック回帰分析を用いた長期待機者の割合と関連する要因の検討では、他要因を補正後も検討した全ての部位で早期がん、他施設診断症例、がん検診・健康診断・人間ドック例において有意に長期待機者の割合が増加していた。また、肺では高齢者において長期待機者の割合が増加する傾向を認めるとともに、肺と女性乳房ではチャールソン併存疾患指数が高い者で長期待機者の割合が低い傾向を認めた。
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