研究実績の概要 |
本研究は、がん医療の質を評価するプロセス指標の1つである診断から治療開始までの待機期間の現状と関連する特性を明らかにすることにより質の改善に寄与することを目的とする。北信4県(富山、石川、福井、長野)に位置するがん診療連携拠点病院(拠点病院)等の院内がん登録データとDPC調査データから構成される北信がんプロがんデータベースの2016年と2017年の診断症例のデータを用いて胃、大腸、肺、女性乳房について待機期間に関連する要因を検討した。 対象症例数は19施設の胃1,956例、大腸2,843例、肺3,309例、女性乳房3,172例の計11,280例である。女性乳房の診断日から治療開始日までの期間の中央値(四分位範囲)は44日(31日―62日)と他部位に比べて長く、また、ロジスティック回帰分析では診断から治療開始までの期間が30日を超えた長期待機に関し他部位と比較して有意な上昇を認めた。この傾向は年齢、個人特性(喫煙、BMI、併存疾患)、腫瘍特性(進展度、症例区分、発見経緯)、手術の有無に関する層別解析でも同様であった。 マルチレベルロジスティック回帰分析による長期待機と関連する要因の検討では、他要因を補正後も検討した全ての部位で早期がん、他施設診断症例、がん検診・健康診断・人間ドック例において有意に長期待機のオッズ比が増加していた。また、施設要因のうち総病床数が上位3分の1の施設では、下位3分の1の施設を基準とした胃、大腸、肺の長期待機のオッズ比が上記の層別解析で検討した要因および性別、施設所在県を補正後も有意に上昇していた。 なお当初計画していた院内がん登録全国集計を用いた分析は、2016年症例以降のデータ提供が研究期間終了までに開始されなかったため実施することができなかった。
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