研究課題/領域番号 |
19K10631
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
太田 充彦 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80346709)
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研究分担者 |
李 媛英 藤田医科大学, 医学部, 助教 (20701288)
八谷 寛 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (30324437)
内藤 久雄 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (90547556)
松永 眞章 藤田医科大学, 医学部, 講師 (80897968)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 筋骨格系障害 / 保育士 / 縦断研究 / 心理社会的要因 |
研究実績の概要 |
本研究では約500人の女性保育士を自記式質問紙調査で追跡した前向きコホート研究データを分析し、(1)腰痛・頸肩腕障害の有病率と自然経過の実態、および(2)就労状況・仕事に関連する心理社会的要因と腰痛・頸肩腕障害の発症・遷延との関連を明らかにすることを目的としている。今年度は2015年度から2020年度までの各年度に実施した調査データをマージし、縦断的な解析が可能な形にデータベース化した。これを用いて、上記目的に沿った縦断的解析を実施した。 2015年度のベースライン調査に参加したのは446人であった。女性が90%、平均年齢は34.6歳(標準偏差11.9)、BMI≧25の者が9%、正職員が87%、職種は保育士が86%、調理員・栄養士が10%であった。ベースライン時に腰痛があった者は270人(61%)であった。これらの者のうち65%、52%、40%の者がそれぞれ1、3、5年後の追跡調査時にも腰痛を訴えていた。追跡不能者がそれぞれの時点で23%、37%、51%いたため、追跡時の腰痛有病率は過小評価されている。ベースライン時に腰痛の痛みが強い者(Numerical rating scaleで3点以上の者)や腰痛に伴って日常生活の支障がある者(Rolland-Morris Disability Questionnaireで1点以上の者)はそうでなかった者に比べて1、3、5年後の追跡調査時に腰痛を訴えるリスクが有意に高かった。ベースライン調査時に心理社会的要因をDemand-Support-ControlモデルとEffort-Reward Imbalanceモデルを用いて評価した。1年後の腰痛の持続・新規発症を有意に予測できた心理社会的要因は低いソーシャルサポート(上司・同僚の支援)のみであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の発生・拡大という予想外の出来事があり、保育園等に訪問して実地調査を行うことが大きく制限された。質問紙調査やデータベース化は着実に進めることができたが、縦断研究ができるデータベース化が完了したのは2021年夏ごろであった。そこから縦断研究を開始し、概ね解析は完了している。2021年度中に論文投稿・公表が完了しなかったが、2022年度中には完了できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
縦断研究が完了し、2021年度末の時点ではこの結果を報告する論文を作成中である。2022年度中に誌上発表できるよう進める。 新型コロナウイルス感染症の発生・継続により、保育士の業務にはこれまでになかった新たな心理社会的ストレス要因が不可として加わっていることが考えられる。また、本研究結果からも心理社会的ストレス要因(上司・同僚からの支援の乏しさ)が腰痛の持続・新規発症に関連することが疑われている。保育士における心理社会的ストレス要因を幅広く明らかにするインタビュー調査・質的分析研究も行い、精神的状態と腰痛の関係をより深く研究することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
剰余分は論文作成に関する経費(英文校正、雑誌掲載費等)および保育士における心理社会的ストレス要因を幅広く明らかにするインタビュー調査・質的分析研究費として使用する予定である。
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