研究課題/領域番号 |
19K10632
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
稲村 昇 近畿大学, 医学部, 准教授 (20533300)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 電子聴診器 / 心臓検診 / 無害性心雑音 / 周波数解析 |
研究実績の概要 |
無害性雑音は病的な因子が存在しないにもかかわらず健康な小児に認める原因不明の心雑音である。小児の7割に認めると言われ、幼児期から学童期にはじめて聴取される心雑音は無害性雑音のことが最も多い。本研究の目的は無害性雑音を電子聴診器で収録し、雑音の特性を解析することで、雑音を可視化することである。 研究の進め方は以下の計画である。心雑音の収録【2019年度】心雑音の解析【2020年度】統計処理【2021年度】レーダーチャートの作成【2021年度】 2019年度の研究進捗状況であるが、2019年度4月より研究を開始した。はじめに、研究計画を作成し、倫理的審査を受けるために近畿大学倫理委員会に研究計画書を5月に提出した。7月に同委員会の承認を得た。7月より、近畿大学病院と関連病院小児科を受診する無害性心雑音と未手術の病的心雑音の録音・登録を開始した。 2020年4月の時点で、無害性雑音20名と病的雑音37名の登録を完了した。登録した無害性雑音は再生し、ノイズの状況を調べ解析可能なものに絞った。現在、解析可能な無害性雑音は15名と病的雑音35名である。対象は1歳から5歳、平均3.8歳で、男7名、女8名である。病的雑音の内訳は心室中隔欠損5名、肺動脈弁狭窄3名、大動脈弁狭窄1名、動脈管開存1名である。 雑音は(1)胸骨右縁第二肋間、(2)胸骨左縁第二肋間、(3)胸骨左縁第三肋間、(4)心尖部の4か所で録音し、解析は信号強度を解析している。信号強度は音圧(RMS)を計測したが、無害性雑音の音量は(1)-35.8±1.8、(2)- 34.5±3.0、(3)-32.7±3.0(4)-35.5±3.2で、(3)胸骨左縁第三肋間が最も音量が高かった。病的雑音は疾患によって音量の最強点は異なるが、最強点の音量と振幅は無害性雑音より有意に大きかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
無害性雑音は乳幼児期から学童期にはじめて聴取される。乳幼児期の無害性雑音は1か月検診・3歳時検診で指摘されることが多く、学童期の無害性雑音は小学校の学校検診で指摘されことが多い。今回の研究では主に3歳時検診と小学校の学校検診で見つかる無害性雑音を対象としていた。無害性雑音50例の登録を目標にしていたが、解析可能な無害性雑音は15例に留まっている。計画通りに登録が進めない理由は2019年度に登録を開始した時期が倫理委員会の承認を得れたのが7月で学校検診が終了していたため既に無害性雑音の紹介が終わっていたという事があった。次に、今年から世界的に猛威を振るっているCOVID19の影響で未だに学校検診が行われていいため例年通りの無害性雑音の受診が皆無である。病的雑音も同様でCOVID19の影響で通常の外来診療も滞っている。次に、3歳時検診で指摘される症例は予想以上にノイズが混入するため解析に不適当な症例が見られたことも予定外であった。
|
今後の研究の推進方策 |
研究が予定通りに進まない時の対応 雑音の収集には1年間で無害性雑音50例、病的心雑音100例を予定していたが、COVID19の影響で雑音の登録が予定を下回っている。計画書に記載したように2020年度も解析と合わせて雑音の登録を行うこととする。次に、関連病院数を1か所増やして収集件数の増加を図る。しかし、COVID19の影響は今後も続くことが予測されるため、対象を1歳未満の無害性心雑音にも拡張する。 雑音の周波数の解析も予定を早めて行っているが、操作方法は簡便であり2021年度の1年間で解析可能と考える
|