研究課題/領域番号 |
19K10632
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
稲村 昇 近畿大学, 医学部, 准教授 (20533300)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 心臓検診 / 無害性心雑音 / 先天性心疾患 / 電子聴診器 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は無害性雑音を電子聴診器で収録し、雑音の特性を解析することで、雑音を可視化することである。 研究の進め方は心雑音の収録(2019年度)心雑音の解析(2020年度)統計処理/レーダーチャートの作成(2021年度)である。 2020年度は関連病院数を1か所増やし、対象を1歳未満の無害性心雑音にも拡張したことで、これまで無害性心雑音52例、病的雑音40名を登録できた。無害性雑音の内訳は 女児26、男児22、年齢3.9±2.7歳。病的雑音は女児18、男児22、年齢5.6±4.9歳であった。心疾患は心室中隔欠損 20例、肺動脈弁狭窄 10名、大動脈弁狭窄 3名、動脈管開存 3名、ファロー四徴 3名、心房中隔欠損 1名、冠動脈ろう 1名、無害性心雑音は関連病院数を1か所増やしたことで目標数を達成することができた。しかし、病的雑音は目標症例数の半分以下であった。これには昨年からのCOVID19の影響による受診控えが影響したと考える。心雑音の解析はAdobe Audition2020を使用して行った。解析方法は採取した心雑音を再生しI音とII音を同定し、I音から次のI音までの区間を解析した。解析内容は指定区間の合計振幅(dB)を算出し、次に心雑音の最強点(合計振幅の高いサンプルポイント)での指定区間の周波数を解析した。結果は雑音の最強点は無害性雑音が第2肋間 ( 8%)、第3肋間 (73%)第4肋間(19%)、病的雑音は第3肋間 (12%)、第3肋間 (76%)、第4肋間 (12%)であった。 最強点での雑音強度は無害性雑音が-29.7±4.6dBで病的雑音は-32.7±2.1 dBであった(p=0.0002)。雑音の周波数は無害性雑音が15.0±7.4Hz、病的雑音が15.7±9.5Hzであった(p=0.8149)。心雑音の最強点は無害性雑音、病的雑音ともに胸骨左縁第3肋間が最も多く、両者で有意差はなかった。心雑音の強度(合計振幅)は病的雑音の方が有意に大きかった。しかし、周波数解析では両者に有意差は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
心雑音の収集には1年間で無害性雑音50例、病的心雑音100例を予定していたが、COVID19の影響で受診控えが多く、病的心雑音の登録が予定を下回っている。 無害性雑音と病的心雑音を比較では期待しているような結果にならなかった。理由は周波数の解析方法に問題があるのでないかと考えている。今回、解析に採用した方法は採取した心雑音を再生しI音とII音を同定し、I音から次のI音までの区間を解析した。解析内容は指定区間の合計振幅(dB)を算出し、次に心雑音の最強点(合計振幅の高いサンプルポイント)での指定区間の周波数を解析した。無害性雑音は雑音の持続時間が病的雑音より明らかに短いため、必要な部分の解析ができていない可能性が考えられる。次に、対象を1歳以下に拡張したことでノイズの混入が多くなったことも解析結果に影響していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
雑音の収集には1年間で無害性雑音50例、病的心雑音100例を予定していたが、COVID19の影響で病的心雑音の登録が予定を下回っている。2020年度と同様に関連病院においても病的心雑音の収集を追加する。 無害性雑音と病的心雑音を比較したところ、最強点は両者で差はなかったが、最強点の合計振幅は病的心雑音が有意に大きかった。これは実際の聴診でも心臓内の圧格差で生じる病的収縮期雑音は持続時間も長くよく聞こえるので予想通りの結果であった。しかし、雑音の周波数解析を解析では無害性雑音と病的心雑音に有意差を認めなかった。実際の聴診では明らかに音色が異なるにも関わらず周波数解析を解析では差がなかったことは、解析方法を検討する必要がある。今回は心周期全体の周波数を解析したが、来年度は雑音が生じている期間に絞って解析すること、低周波と高周波の比率を見るなど工夫をする。更に、呼吸音などのノイズを除去することも考えている。 今回は無害性雑音と病的心雑音を比較したが、音圧そのものが異なるため周波数まで解析しなくても音の強度で区別できる病的雑音が多い。しかし、実際は心雑音のように聞こえたが、心雑音ではなかったという心音も含める必要がある。2021年度はこれら心音の異常と病的心雑音、無害性雑音のレーダーチャートを作成することで無害性雑音を明確に区別できる方法を考える。
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