本研究の目的は、生活習慣病に最も影響を与える体脂肪量とBMIの組合せを検討し、生活習慣病リスクの高い高値BMI集団と生活習慣病リスクの低い正常BMI集団を正しく弁明することである。まず最初に生活習慣病として高血圧に着目し、体脂肪量指数および除脂肪量指数の組合わせと高血圧の関連について解析を行った。本研究の仮説として、体組成を考慮した体脂肪量指数および除脂肪量指数の組合わせを用いることで高血圧有病におけるモデルの当てはまりの良さがBMIを用いた場合よりも優れると仮定したが、高血圧有病のAUROCは、BMIを用いた場合と同程度であった。本研究により、体脂肪量指数および除脂肪量指数の減少、つまり体重の減少が高血圧予防に重要であることが示唆された。 また、生活習慣病として糖尿病に着目し、体脂肪量指数および除脂肪量指数の組合わせとHbA1cの関連について解析を行った。男女とも全ての除脂肪量指数群で、体脂肪量指数が高いほどHbA1cが高かった(傾向性のP値<0.001)。一方、多くの体脂肪量指数群で除脂肪量指数が高いほどHbA1cが高い傾向は見られなかった。以上より、体脂肪量指数の減少が糖尿病予防に重要である可能性が示唆された。 また、脂肪量指数および除脂肪量指数の組合わせと頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)の肥厚との関連解析の結果、男女とも全ての体脂肪量指数グループで、除脂肪量指数が高いほど頸動脈IMTが高かった。頸動脈IMTは動脈硬化だけでなく、除脂肪量の高い代謝要求に伴う血圧の上昇による血管壁の肥厚のような血行動態の生理学的な適応も示している可能性が示唆された。 また、体脂肪量指数が高いほど高LDLコレステロール血症の有病オッズ比が高かった一方、除脂肪量指数が高いほど高LDLコレステロール血症の有病オッズ比が低い傾向が認められた。詳しい内容については今後さらに吟味していく。
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