運転を停止した高齢者と継続した高齢者を追跡し要介護状態への移行または死亡しやすさにおける違いを検討した分析を行い,基本的属性や心身の健康状態を調整しても,運転継続者に対し運転を停止した者で要介護状態になるリスクが2倍高いことを示した. 運転停止者の活動性低下に関連する環境要因の分析では,2時点の調査データを用いたパネルデータを用いた分析を行った.個人の心身の健康・機能状態以外に,運転停止後の交通手段,居住地の買い物環境に注目して検討を行った.分析の結果,買い物環境がよくないことが外出頻度と歩行時間の減少に正の関連があることが明らかになった.また,公共交通や自転車の利用が外出頻度と歩行時間の維持に良いことが明らかになった. 高齢者の活動性とその後の介護費用の関連を検討する分析では,調査回答者38875名を約6年間追跡して介護費用を算出した縦断データを用いた.活動性の指標として外出頻度と1日の平均歩行時間を用いた.分析の結果,ほぼ毎日外出している者に対し,外出が週1回以下の者は介護費用が7万円高いことがわかった.また平均歩行時間が60分以上の者に対し,30分未満の者は介護費用が11万円高いことがわかった. 本研究の結果から,運転停止は高齢者の活動性低下のリスクを高めると考えられるが,公共交通等の環境要因により活動性の低下を抑制できる可能性があることが示された.活動性と介護費用の関連が明らかになった,高齢者の活動性維持のための公共交通の整備等への政策を抑制できる介護費用によって評価することが可能になった.
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